2007/06/07

人工衛星

天気予報を見ていて、気象衛星のことが気になったのだ。
気象衛星は静止衛星のひとつだけど、静止衛星って本当に「静止」しているわけではなくて、地球の自転と同じ速度で赤道上空を回っているから「止まっているように見える」ということなんだよね。
実際には、赤道の上空約36,000kmをまわっているのだ(物理学的により正確に言うと、「永遠に落ち続けている」ということみたい。)。

これはニュートンさんの古典物理学で軌道の高さが決まっているんだよ。
実際にわりと簡単に計算できて、地球の重力を向心力とする等速円運動として考えると、この値が出てくるのだ。
運動方程式にあてはめると、向心力=人工衛星と地球の間の万有引力(すなわち重力)となるので、地球の質量をM、人工衛星の質量をm、地球の赤道半径をR、人工衛星の軌道高度をr、で、万有引力定数をGとすると、

 向心力=重力=GmM/(R+r)

となって、等速円運動の時の向心力は、円運動の角速度ωとすると、m(R+r)ωになるから、

 角速度ω=GM/(R+r)

となるのだ。
この円運動の周期Tは、2π/ωなので、

 周期T=2π×(R+r)3/2/(GM)1/2

となるわけ。
この式がおもしろいのは、人工衛星の質量は関係なくて、軌道の高さだけで周期が決まるということなのだ。
どんな重さの人工衛星でも、軌道高度が同じなら同じ周期で地球のまわりを周回するんだよ。
このTが24時間で、地球の質量Mが6×1024kg、赤道半径Rが6,400km、万有引力定数Gが6.7×1020/skgなので、rを求めると、約36,000kmが出てくるよ。
(自分ではきちんと計算していないけど、だいたいそんな値が出るはずなのだ・・・。)

で、カーナビに使われているようなGPS衛星は、12時間周期で地球のまわりを回っているんだよね。
上の式からそれを考えてみると、(36,000+6,400)で24時間で、その半分だから、GPS衛星の軌道をr’とすると、42,4003/2=2×(r’+6,400)3/2になって、

 r’=42,400/41/3-36,000

になるのだ。
4の立方根はだいたい1.6くらいなので(1.6の三乗は4.096)、約20,000kmという値が出てくるんだよね。
実際にGPS衛星の軌道高度は20,000kmくらいなので、この式はおおよそあっているのだ。

でも、実際には地球は完全な球体じゃなくて重力に偏りがあるし、人工衛星の軌道も完全な円軌道ではないので、少し値はずれるのだ。
それに、月や太陽の引力の影響、地球のまわりにある微量の粒子による摩擦の影響なども受けるので、人工衛星の軌道は徐々にずれていってしまうんだって。
なので、実際の軌道を観測しながら、微修正をしているのだ。
人工衛星にはスラスタなどの軌道の高さを一定に保つための装置がついているんだよ。
で、この人工衛星を一定の軌道にとどめる操作を運用と言うのだ。

静止衛星を打ち上げるときは、北半球では東打ちといって東の方向に向けて打ち上げるんだけど、これにはわけがあるんだ。
北半球で東の方向に打ち上げると、地球の自転と同じ方向に打ち上げることになるので、打ち上げたロケットの速度に地球の自転速度の分が上乗せされることになるのだ。
ロケットが地上に落ちずに静止軌道まで人工衛星を届けるためには、それだけの推力とスピードが必要なんだけど、特に軌道高度の高い静止衛星の場合は地球の自転速度の分の上乗せでより効率的に打上げができるということなのだ。
(実際には静止軌道への遷移軌道に投入するんだけどね。)
よく地球の自転による遠心力を推力に上乗せしていると誤解されるんだけど、地球を止めてみた場合の遠心力は重力の抗力で実際には関係していないのだ。

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