2008/02/26

なんで他の原料が入っているのに100%?

米国人はとにかくオレンジ・ジュースが大好き。
シンポジウムなんかでも、コーヒーとともに必ずオレンジ・ジュースとミネラル・ウォーターが用意されているくらいなのだ。
日本では加糖した甘いジュースが多いけど、米国の場合は多くの場合果汁100%ジュースだよ。
それでも米国のオレンジはもともと甘いので、そんなにすっぱくなく、自然な甘さでおいしいのだ。

でも、前から不思議なのは、原材料のところを見ると香料やビタミンC、保存料なんかが添加されているにもかかわらず「果汁100%」であるということ。
果汁100%グミなんてお菓子もあるけど、グミってゼラチンでかためたものだし、日本のグミの場合はおおよそ20~30%の濃度のゼラチンでかためてあるので、しぼったままのジュースをゼラチンでかためたのでは「果汁100%」にならないはずなのだ!
で、この謎を解く鍵が「濃縮還元」なんだよね。

濃縮還元というのは、果実をしぼったジュース(ストレートジュース)から水分を飛ばして濃縮したもので、飲むときに水で薄めるのだ。
液量を半量まで減らせば200%の状態になっているから、他の香料やビタミンCを加えた上で元の液量になるまで水を加えると、果汁100%のジュースになるというわけ。
しぼったままの生果汁は果物のままよりは保存性も高いし、運搬も容易なんだけど、濃縮果汁にするともっと保存性がよくなるし、何より水分が飛んでいるので軽くなるのだ。
それで流通しやすくなるというわけ。

かつては加熱して水分を飛ばすのが主流で、それによって殺菌も兼ねていたみたい。
濃縮すると浸透圧も高くなるので雑菌も繁殖しづらくなって、さらに保存性が高くなるんだよ。
でも、加熱して水分を飛ばす場合、一緒に風味なんかも飛んでしまうのだ。
特に柑橘系の風味は揮発性の物質のいわゆる精油(エッセンシャル・オイル)で、リモネンのようなテルペン類や高級アルコール(炭素数の多いアルコール)と低級脂肪酸(炭素数の少ない脂肪酸)のエステル類などで、これは加熱すると蒸発してしまうのだ。
なので、後から香料を足さないといけなくなるんだよね。
最近ではそれを避けるためにフリーズドライの要領で果汁を凍結させて氷になった水分を除去して水分量を減らす方法も出てきているのだ。
この場合は風味も飛びにくいんだ。
缶チューハイだけど、キリンの「氷結果汁」の果汁はこの方法で濃縮還元した果汁を使っているんだよ。

濃縮還元の果汁は100%ジュースに使われるだけじゃなくて、様々な果汁入りの飲料に使われるのだ。
でも、日本農林規格(JAS)では濃縮還元も含めた果汁100%のもの以外は「ジュース」として販売してはいけないことになっていて(はちみつや糖の添加は認められているのだ。)、果汁が50%以上のものは「果汁入り飲料」、50%未満のものは「清涼飲料水」になるそうだよ。
なので、むかし日本でよく飲まれていたオレンジジュースの多くは清涼飲料水か果汁入り飲料なのだ。
ボクが子どもの頃のオレンジジュースなんかはだいたい果汁30%くらいだったと思ったよ。
それになれていたからはじめて果汁100%のポンジュースを飲んだときは衝撃だったけどね。

ちなみに、野菜ジュースについては特別の定義があるので、果汁100%でも「ジュース」と名乗っていいのだ。
トマトジュースとニンジンジュースに規定があって(どちらも塩などの添加は認められるけど基本的には野菜汁100%)、たいていの商品はトマトジュースに他の野菜の汁を混ぜたトマトミックスジュースか、ニンジンジュースに他の野菜の汁を混ぜたニンジンミックスジュースなんだって。
果汁が50%以上で野菜汁意外に混ぜものがないものだけが果実・野菜ミックスジュースと名乗れるそうだよ。

ジュースというと日本語では甘めのソフトドリンクの一般名称のように思っていたけど、JASではきっちり規格が決まっていてかなり幻覚に管理されているようなのだ。
これってちょっとおどろきだよね。
いわゆる「アイス」が規格上は、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓に分かれるのと同じようなものなんだろうね。

0 件のコメント: