2008/02/27

これが本当の道路事情

ボクの趣味は言わずと知れたお散歩だけど、歩いていると感じることがあるのだ。
それは日本と米国の道路の違い。
同じアスファルト舗装だけど、なんだか感じが違うんだよね。
これは米国の舗装がデコボコでいいかげん、というだけではないような気がするんだよね。
そこで、そもそもアスファルト舗装とはどういうものなのかまでさかのぼって調べてみたのだ。

アスファルトは原油中に含まれるどろどろの液体で、ほとんど流動性がないものなのだ。
原油の中でももっとも重質のもので、石油精製ではどろどろの重油のさらにその後まで残るものだよ。
まさに石油臭いドロのようなものなのだ。
今は石油精製で最後に残ったものをアスファルトとして使っているけど、天然のアスファルトも産出する地域がけっこうあって、かなりむかしから接着剤などに使われていたようなのだ。
旧約聖書に出てくる「バベルの塔」にも接着剤としてアスファルトが使われていたそうだよ。

でも、アスファルトが一般的になるのは、原油の利用が広まってきた18世紀以降。
石油の精製で必ず最後に残るので、きっとその使い道を考えたのだ。
その粘着性の高さから主に接着剤として使われるんだけど、そんな使い道の中でももっとも身近なのが道路の舗装。
ちなみに、アスファルトは英語ではasphaltだけど、これはギリシア語「アスファルトス(ασφαλτοσ=asphaltos)をそのまま外来語として取り入れたもので、「a」は「しない」、「sphalt」は「落とす」という意味なので、「落とさない・落ちない」というような意味なのだ。
これも接着剤的な性質と関係あるのかな?

実は、日本でも天然のアスファルトが北海道から新潟にかけての日本海側で産出して、それは土器の修復などに接着剤として使われていたんだって。
関東で出土する土器にも使われた形跡があるそうで、流通もしていたようなのだ。
越後の国(新潟)では燃える水の「臭水(くそうず)」がわき出ることが知られていたんだけど、これは天然の原油なんだよね。
なので、日本海側で天然のアスファルトがあっても不思議ではないのだ。
日本で最初のアスファルト舗装が施されたのは長崎のグラバー園内の歩道らしいんだけど、そのときには秋田産の天然アスファルトを使ったんだそうだよ。

で、このアスファルト舗装は、アスファルトを接着剤(結合材)として、砂や砂利の骨材と充填剤のフィラーを混ぜて「アスファルト・コンクリート」というものを作って、道に流してならしたものなのだ。
熱いうちは多少流動性があるから、冷めないうちに流しこんで、それを上からプレスして平らにしてかためるんだよ。
道路工事でバタバタうるさいのがまさにアスファルトをならしている作業なのだ(今あるアスファルトを掘削するドリルのガタガタいう音もうるさいけどね。)。
水道工事をした後なんかはそこだけアスファルト舗装をし直すけど、新しいところだけ少しやわらかかったりするよね。
それが冷めてかたまるとしっかりとして道路になるのだ。
はじめのうちは黒くて、雨が降ると油が浮いてきたりもするんだけど、しばらくするとまわりのアスファルトと同様にねずみ色になるんだよね。
で、ボクの気になっている米国と日本の道路舗装の違いは、きっと砂利とか砂とかのアスファルト以外の材料の違いなんだろうね。

アスファルトで舗装する利点はいくつかあるんだけど、ひとつは表面はぬれるけど基本的には水をはじくので「ぬかるまない」ということなのだ。
土の道路だとどうしても雨が降るとぬかるんで自動車のタイヤが沈んでしまったりするけど、そういうことがなくなるんだよ。
でも、その代わり道に水がしみこまなくなるので、雨が降った後にいつまでも水が残ってしまう可能性があるのだ。
だからきちんと排水溝なんかを整備しないといけないんだよね。
さらに、地下水としてしてしみ込むものもなくなるので、あんまりアスファルトでかためすぎると地盤沈下の原因にもなるのだ。
なので、最近ではわざとアスファルトの舗装に溝や穴を開けて、そこから水が地面にしみこむようにしたりもしているんだよ。

もうひとつのメリットは道路がかたくしっかりすること。
土の道路だとどしても思いものが上を通るとそこだけ凹んでしまったりするけど、アスファルト舗装の道路は土よりはかなり頑丈なのだ。
よっぽど重いものが上に載ると沈み込んでしまうけどね。
でも、トラックなんかがひっきりなしに上をとっても、そこに目に見えるような轍は残らず、走りやすい道を維持することができるのだ。
とは言え、多少は沈み込むし、表面も削られてしまって長期間で見ると轍はできるので、定期的に補修が必要なんだよね。
理由はそれだけじゃないかもしれないけど、あちこちで道路工事をやっているのはそのためなのだ。

ちなみに、アスファルトに似た化石燃料由来の黒い液体にはコールタールというのもあるよね。
これは石炭をコークスにするときに乾留すると得られる副産物なんだけど、ナフタレン、ベンゼン、フェノールなどの芳香族化合物の混合物なのだ。
見た目こそよく似ているけど、アスファルトとは性質や用途はまるで違うものなんだって。
接着剤ではなくて、木の電柱や線路の枕木の防腐剤として塗られたり、トタン屋根の塗料に使われたりしていたらしいのだ。
今では化学物質を取り出すのが主な使い道だろうけど(それでも石油からの方が簡単にとれるのでマイナーになってきているみたいだけど。)。
で、このコールタールには発がん性があることが知られていて、世界ではじめて発がん性があることが証明されたものでもあるんだよ。
日本の山極勝三郎博士が3年間ウサギの耳にコールタールを塗るという実験を続けて、コールタールが発がん性があることを証明したのだ。
そういうのもあってあんまり見かけなくなったんだよね。
そこら中にあるアスファルトとはそういうところでも違うのだ。

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