2008/02/05

あくまで目安だよ

今日はブッシュ政権最後の予算教書が提出されたのだ。
毎年2月の第一月曜日に大統領から議会に提出されるんだよね。
これから議会ではこの要求内容をヒアリングしたりしながら審議して、予算法案を作っていくことになるのだ。

米国の会計年度は10月から翌年9月までで、今回の予算教書は2008年10月から2009年9月までのFY2009年の予算なんだ。
日本的なイメージだとFY2008年じゃないの?、って気がするけどね。
で、この内容は年末までにホワイトハウスの中の行政管理予算局(OMB:Office for Management and Budget)という部署が各省庁の要求をとりまとめて調整されるのだ(FY2008年予算は年末までずれ込んだから、きっと調整作業は大変だったのだ。)。
日本で言うと財務省の主計局のような存在なんだよね。
年末までに調整した予算案について、各省庁で膨大な説明資料を作り、予算教書の提出に備えるのだ。
予算教書が提出されると、ホワイトハウスや各省庁で大量の予算関連資料が公開されるんだよ。
数百ページに及ぶものから千ページを超えるものもあって、日本の省庁のHPなんかで公開されている予算関連資料とは比べものにならない情報量なのだ。
情報量が多すぎてかえって見づらいという話もあるけど(笑)

この予算教書は行政府としての予算要求なんだけど、米国では予算は議会が作るのでこれはあくまでも目安なのだ。
というのも、米国では予算も法律として成立させないといけないんだけど、米国の行政府は日本の行政府と違って立法権、つまり議会に法案を提出する権利を持っていないのだ。
なので、こうして予算案の目安を大統領要求として議会に提出し、議会はその内容を吟味して、自分たちで予算法案を作っていくんだよね。
日本では内閣提出法案がほとんどだけど、米国の場合は政府からの法案提出ができないから、自分たちで法律を作ったり、改正したいときは議会に働きかけないといけないのだ。
大統領と議会の多数派が同じ党ならまだましなんだろうけど、今みたいにねじれた関係(大統領は共和党で議会の多数派民主党)だと、お互いに牽制しあって苦労するのだ。
予算もお互いに妥協・譲歩しないといけないわけ。

議会の中で予算を担当するのは両院にある歳出委員会(Committee on Appropriation)という委員会で、これは議会が扱うのが歳出予算だからなのだ(いわゆる予算権限=Budget Authorityというやつで、米国の予算にはこの他にもOutlay=支出ベースのものがあるのだ。ボクにもよくその関係はわからないんだけど。)。
歳出委員会の下には分野ごとの下部委員会があって、そこでヒアリングをしたり、分野ごとの法案(オムニバス法案)が作られるんだ。
予算法案ができると下院先議で審議が行われ、両院を通って大統領が署名してはじめて予算が成立するんだ。
もちろん、大統領には署名せずに「拒否(veto)」する権利もあるから、予算法案の中身についてはある程度ホワイトハウスと事前に調整するみたいだよ。
そうしないと時間ばかりかかって予算ができないからね。
と言いつつ、FY2007年予算は時間切れでFY2006年予算ベースの暫定予算として乗り切っているし、FY2008年予算も新会計年度が始まって3ヶ月経過した12月末になってやっとできたのだ。
これで拒否権が発動なんてされると、とんでもないことになるよね!

議会は行政府の予算要求をもとに予算を作るわけだけど、そのときに議会主導の予算項目を入れていくのだ。
それが「Earmark」と呼ばれるもので、多くの場合は議員が地元との関係でつけるような予算なんだよね。
日本ではこういうのが表沙汰になるのをいやがるけど、米国の場合は提案議員の名前入りでリストが作られたりもするので、かなり認められていることみたい。
と言いつつ、ブッシュ大統領は「透明性のないプロセスだ」と非難していて、FY2008年予算ではEarmarksの半減を目標に掲げていたんだよね。
でも、けっきょくそれは実現できなかったので(予算成立が遅れたこともあった拒否権までは発動しなかったのだ。)、今回はもっときびしくEarmarksに対処すると一般教書演説でも言っているんだよ。
議会としては手柄を見せる一番おいしいところでもあるから、どうなることやら。

それにしても、米国の予算プロセスは日本と似ているところもあるけど(OMBが各省庁の要求を査定するところなんかは日本の財務省とほとんど同じみたいだよ。)、全体の流れは大きく違うのでなかなかおもしろいよ。
大量の説明資料をもとに、時間を空けて議論していくというのは大切なのかも。
実際に米国の予算はその議論の過程で大きく修正が入るしね。
でも、そのためにどれだけの労力をかけるのか、という問題もあるし、なかなか難しいところなのだ。
日本の場合は予算委員会はもめるけど、それで予算の内容が大きく変わるわけでもなくて、なんだか不思議なんだよね。

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