2008/02/17

UME

そろそろ梅の咲く季節になったのだ。
梅は桜と比べるとマイナーな扱いを受けることが多いけど、甘い香りも魅力的だし、赤や白、ピンクなど色彩も鮮やかなのだ。
通人は今でもウメの花見を楽しうというけど、ボクは梅も桜も両方好きなんだよね。
時期もずれているから、梅を楽しんでから桜を楽しんでと、はしごするのもいいよね(笑)

梅は中国長江流域が原産で、日本には8世紀頃に渡来したんだって。
ちょうど奈良時代くらいかな?
かつては桜より好まれていたんだけど、平安時代以前は「花」と言えば梅を指すくらい好まれていたのだ。
その後桜が天下(?)をとって、今に至るんだよね。
梅は桜に先駆けて1月の終わりから2月という冬の終わりに咲くけど、これは日本の気候に馴染んでいないからなんだとか。
梅は虫媒花で昆虫に花粉を運んでもらわないと実が作れないんだけど、わざわざ昆虫の好きな飯食に花を咲かせているのだ。
でも、この時期は逆に咲いている花は少ないから、昆虫にとっては貴重な花で、活動している昆虫はみんな来るだろうから、かえって有利なところもあるのかも。
そうでないと日本では生き残れなかったはずだし、梅の実が日本で食べられないのだ。
梅はアンズと非常に近縁で(アンズもかなり早めに花が咲くよね。)、わりと普通に交雑してしまうそうだよ。
花を楽しむ梅(野梅系というらしいよ。)の実は小さくて、食用の梅の実はアンズと交雑した豊後系という大きな実のなるものなんだって。

「うめ」の語源は中国語の「梅(マイ又はメイ)」で、伝来した当時の日本語では鼻音の前に軽く鼻音を重ねて「め」じゃなくて「んめ」のように発音していたらしくて、それで表記も「むめ」となっていたそうだよ。
当時は「ん」の字がないから「む」で代用していたわけだけど、これが字のとおり「むめ」と読まれるようになり、それが「うめ」になったんだって。
ちなみに、梅の学名はPrunus mumeで、ここにも「むめ」が残っているのだ!

梅といえばやっぱり梅干し。
梅の実は4月の終わりから5月頃にかけて実をつけ、それが6月頃に黄色く熟すのだ。
桃やアンズと違って熟してもまったく甘くならないのが梅の特徴なんだよね。
で、梅酒の場合は未成熟の青梅を焼酎(ホワイトリカー)と氷砂糖で漬けて作るんだけど、梅干しの場合は熟したものを使うのだ。
熟した梅干しをよく洗って一晩水につけてアク抜きをしてからたっぷりの塩で漬けるのだ。
すると、梅の実から水分が出てきて梅の実が液の中に浸かるようになるのだ。
この液体が梅酢(白梅酢)で、梅の実に含まれるクエン酸がたっぷり含まれていてとてもすっぱいんだよ。
塩漬けにした梅を天日に3日ほど干すと伝統的な梅干しのできあがり。
かつては6月の終わり頃から塩漬けをはじめ、ちょうど土用のころに日干しにしたので土用干しと言われるんだ。
こうしてできた梅干しは色が白っぽいので白干しと呼ばれるそうだけど、すっぱいだけでなくとにかく塩辛くて、とても保存性の高い食品なのだ。
100年以上までの梅干しを食べた、なんて話があるけど、それはこの梅干しだよ。

一方、白干しでは塩辛すぎるので、一般には塩分を抑えて漬けた梅干しが普及しているのだ。
代表的なのはしそで色づけしたしそ梅。
梅酢が出てきたところであらかじめアク抜きしておいたしその葉を加え、一緒に漬けるのだ。
そうすると赤い色としその風味がつくんだよね。
それを白干しと同様に天日干しにして日の丸弁当に使う赤い梅干しのできあがりだよ。
しその赤い色のついた梅酢は赤梅酢と呼ばれるのだ。
スーパーなんかで売っている梅干しの多くは実はこの赤梅酢に梅の実をつけただけのもので、「梅酢漬け」というものなんだ。
塩漬けもしていないし、天日干しもしていないので、保存食にはなっていなくて、普通の酢漬けのようなものなのだ。
なので賞味期限がわりと短かったりするんだよね。

ちなみに、梅の実は生のまま食べると毒だと言われるけど、それは梅の実の中に青酸配糖体(シアノグルコサイド)が含まれるからなのだ。
これが胃腸などで酵素によって加水分解されると、猛毒の青酸(シアン化水素)ができてしまうので、それが悪さをするわけ。
青酸は酸素より強力に赤血球中のヘモグロビンに結合してしまい、しかも離れないので、体内の酸素供給が不足するようになってしまうのだ。
一酸化炭素も青酸よりは弱いけど、酸素に比べるとはるかに強くヘモグロビンに結合するので、それが毒性になっているんだよ。
青酸や一酸化炭素中毒になった人の血液はとてもあざやかな色をしているんだけど、これは酸素が結合したヘモグロビンが多く流れている動脈の血の色があざやかで、酸素が結合していないヘモグロビンが多く流れている静脈の色が黒っぽいのと同じなのだ。
ヘモグロビンは酸素などが結合している状態であざやかな赤い色になるんだよ。
でも、梅酒漬けにしたり、梅干し・梅酢漬けにするとこの青酸配糖体はほとんど消失するので、人体に影響が出ないと言われているんだ。

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