まだまだこわい病気
今米国のブッシュ大統領はアフリカに行っているのだ。
ブッシュ政権ではエイズやマラリアなどの伝染病対策でアフリカ諸国に協力することを積極的に打ち出しているんだけど、それが感謝されているみたいだよ。
エイズは比較的予防が簡単なわけだけど、マラリアの場合は徹底的に公衆衛生を向上させて、しかも、もしものときのために特効薬も用意しなくちゃいけないから、けっこう対策は大変なのだ。
日本にも土着のマラリアがいたらしいんだけど、今ではほぼ絶滅していて、もっぱら海外から持って帰ってきてしまう症例が知られているだけなのだ。
マラリアは原虫による感染症で、ハマダラカによって媒介されるんだよね。
マラリア原虫は赤血球の中で増えるんだけど、その活動によって人間は40度を超える熱を数日おきに繰り返すことんあって、重体になるのだ(赤血球を壊してたくさんの原虫が出てくるときに高熱が出るらしいのだ。)。
3度目の高熱を迎えるとかなり重篤な状態みたいで、かなり致死性も高いんだよね。
人間はマラリア原虫にとっては中間宿主で、人の体の中では無性生殖で増えて、その増えたマラリア原虫を血液と一緒にまた蚊が吸って、蚊の中で有性生殖をするのだ(つまり終宿主はハマダラカということ。)。
マラリアはあなどれない病気で、慢性化するとかなり時間が経ってからも高熱が出たりするんだよね。
第二次世界大戦中に南洋で罹患した人はずっと高熱に悩まされていたようなのだ。
最近は地球温暖化問題で日本でもマラリアが復活するかも知れないと言われているんだけど、これは現在猛威をふるっているマラリアの多くが熱帯性だから。
でも、実は今でも日本にはハマダラカ自体は生息していて、それでも土着マラリアは消えていったようなのだ。
その理由としては、ハマダラカは夜間い地を趨勢質があるらしいんだけど、農法や生活様式の変化でおぼハマダラカに血を吸われることがなくなったので、マラリアが伝播する可能性が減ったと考えられているみたい。
こわい病気だから、日本でのアウトブレイクは是非とも避けたいところなのだ。
マラリアの特効薬といえば南米原産のキナからとれるアルカロイドのキニーネ。
もともと南米にはマラリアはなくて、キナの皮が解熱剤として民間薬として使われていたんだって。
欧州人の侵入以降、様々な病気とともにマラリアも入ってきたんだけど、そのとき、偶然にも解熱剤に使っていたキナがマラリアによく効くことがわかったそうなのだ。
今では副作用が強いこともあって、キニーネの構造を模して作られたクロロキンなどの薬が使われているんだけど、第二次世界大戦前後ではまだキニーネしかないから、南洋に進出しようとしていた日本にとって特に重要なものだったんだよ。
今でもクロロキン耐性の熱帯性マラリアなどにはキニーネが使われるみたい。
キニーネはマラリア原虫に特異的に毒性を示すんだけど、それはマラリア原虫の赤血球の中での栄養源と関係しているのだ。
マラリア原虫は赤血球中のヘモグロビンを分解して栄養にしているんだけど、そのとき、マラリア原虫にとっては毒となるヘムができてしまうのだ。
で、マラリア原虫はヘムを無毒化するためにヘムポリメレースという酵素を使うんだけど、キニーネはこの酵素の活性を阻害することで、マラリア原虫に毒となるヘムの無毒化(重合)をじゃまするのだ。
第二次世界大戦のころは、キナは世界中で重要な植物となっていたんだけど、当時は英国とオランダにほぼ独占されていたんだよね。
英国はインドとスリランカに、オランダはインドネシアにプランテーションを作り、世界にキナ(キニーネ)を供給していたんだ。
日本もはじめはオランダなんかから勝っていたんだけど、足元を見られてとても高い値段をふっかけられるので、なんとか自前でキナを栽培したかったのだ。
そんな国産のキナプランテーションを成功させたのが、SF作家の星新一さんの実父である、星制約の創始者・星一さん。
当時は日本領だった台湾でキナの栽培に成功し、満州なんかで近代的なキニーネの製造ラインも立ち上げて、大躍進を果たしたのだ。
でも、そのプランテーションや製造ラインは国に接収されてしまい、しかも、戦後は台湾が日本領ではなくなったので、せっかく作り上げたものが無になってしまうんだよね(この話の裏では、じっこんにしていた後藤新平さんの政敵から様々な妨害工作を受けていて、それが原因で星一さんは失脚してしまうんだよね。)。
いずれにせよ、戦後はキニーネの化学合成もできるようになって、クロロキンなどのもっと使いやすい薬ができてあんまりキナのプランテーションは重要ではなくなったんだけど。
キニーネにはもうひとつ特徴があって、とにかくめちゃんこ苦い物質なのだ。
味覚研究では苦みの標準物質として使われているくらい。
ジン・トニックなんかに使われるトニック・ウォーターは炭酸飲料に香料などを加えたものだけど、苦みとしてはキニーネを加えていたそうだよ。
その苦みが飲みやすさとなって評判がよかったんだって。
米国には今でもキニーネが添加されているものがあるみたい。
キニーネは紫外線を当てると蛍光を出すので、ブラックライトに当ててぼんやりと光ったらキニーネ入りなのだ。
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