2008/02/19

ウマかった

ボクにとって冬の大敵は寒さとともに乾燥なのだ。
わりと肌が弱くて、乾燥してくるとすぐにかさかさになってしまうんだよね。
くちびるなんかも割れてくるし、指先もざらざらになってしまうのだ。
なので、リップクリームやハンドクリームなんかはかかせないのだ。

そんなボクが日本でよく使っていたのは「馬油」。
ウマの脂肪から抽出した油で、むかしから東アジアではやけどや肌荒れなんかの民間療法に使われていたんだよ。
日本にも中国から伝わってきたとか。
馬油の特徴は人間の体温よりも融点が低いので、肌に触れた途端にさらさらになることなのだ。
融点が高い油だとべとべとするけど、すぐに融けてさらさらになるのでよくのびるし、皮膚にもよく浸透するそうだよ。
天然のハンドクリームみたいなものなのだ。

ウマの脂肪はウシやブタ、トリなどの他の食用動物の脂肪よりも融点が低いことで知られているんだよね。
これはおそらく脂肪の組成の違いで、きっとコレステロールが少なくて不飽和脂肪酸が多いのだ。
馬肉は鍋や刺身で食べるけど、馬刺しは舌の上で身の脂が融け出してまったりとした味になるのだ。
ウマは体温が高いこともあってあんまり寄生虫がついていなくて、ウシと同様に生で食べられるっていうこともあるんだけど、馬刺しが馬肉の食べ方の主流なのにはこういうわけがあるのだ。
牛刺しもあるけど、ウシの場合はまわりを少し焼いて温めて「たたき」にした方がおいしいんだよね。
西洋文化のレアステーキも表面を焼いて中を温め、脂を融かすことでおいしく生に近い肉を食べようという試みなのだ。
タルタルステーキみたいに生で食べることもあるけどね(でも、ウシよりウマの方がメジャーなのだ。)。

馬肉は別名サクラ肉とも言うよね。
これには諸説あって、肉を切り出して空気に触れたときにきれいな桜色になるから(筋肉中のミオグロビンが空気中の酸素と結合して赤みが出るのだ。)、桜の咲く時期がおいしいから(冬に枯れ草をたくさん食べて脂肪を蓄えた後だから春先がおいしいと言われるのだ。)とか言われているんだって。
江戸時代の童謡の「咲いた桜になぜ駒つなぐ」というものから来たという節もあるそうだよ。
でも、「サクラ肉」という呼び方が定着したのは、江戸時代は獣肉食は「ももんじい」と言われて敬遠されたことと関係があるのだ。
イノシシの肉は「ボタン肉」、シカは「モミジ肉」なんて呼ぶけど、これは仏教の普及で獣肉食がタブー視されるようになったんだけど、やっぱり食べたいので別の呼び方で呼んでいた、ということなんだよね。
ウサギを1羽、2羽と鳥のように数えるのもそうだし、イノシシを山鯨と呼んだりするのも同じところに根があるのだ。

そういう意味では、日本ではウマの肉はウシの肉よりはるかに前から親しまれてきたとも言えるんだよね。
ウシも食べていなかったとは言えないけど、ウマの方がはるかにメジャーな獣肉だったのだ(ウシがメジャーになるのは明治維新以降、牛鍋がはやりだしてからだよね。でも、日本人にはクセのないブタの肉の方が好まれているんだよね。)。
きっとトリほどは食べていなかったとしても、それなりに食べられていたみたいだよ。
今では競走馬なんかが走れなくなると馬肉にされるなんていうけど、実際には食用の馬肉のほとんどは輸入しているんだって。
競走馬なんかの肉も市場に出回ってはいるそうだけど、数が少ないので確率的にはほんとど当たらないようだよ。

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