進化
欧米には「インテリジェント・デザイン」という考え方があるのだ。
これはダーウィンさんから始まった進化説を否定するもので、世界のありとあらゆるものが全知全能の神がデザインした、というものなんだ。
これだけ複雑でありながら調和した仕組みが自然にできあがるなんてナンセンスで、神でなければ作り得ない、と主張して、教科書に載っている進化説の話を削除するよう求めたりもするんだよ。
最近このインテリジェント・デザインの考え方に基づく博物館も作られたとか。
※別に世界のとらえ方は科学がすべてじゃないからボクは否定も肯定もしないけど、別に他のパラダイムを攻撃することはないから、科学は科学、聖書は聖書、と割り切ればいいのに、とは思う。
で、この話を耳にして、大学の時に授業で習った進化説のおもしろい話を思い出しのだ。
話を聞いたときは、へぇ~って感心したものだよ。
進化って、合目的的に見えるけど、それは結果を見ているからで、実際には多種多様なものの中から合理的なものだけが残っていくっていう仕組みなんだよね。
「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」の世界なのだ。
そんな世界の法則として提唱されているものなんだ。
ひとつ目は「ハンディキャップ仮説」というもの。
これはクジャクでは羽の立派なオスがもてたり、シカではツノの大きなオスが好まれたり、セミでは鳴き声の大きなオスがメスを獲得する「理由」を説明しようとするものなんだ。
証明できないから仮説のままなんだけど。
この考え方では、立派な羽や大きなツノ、大きな鳴き声は必ずしも生存競争上は有利に働く要素ではなくて、むしろ捕食者に見つかりやすかったり、生活の邪魔になったりして不利に働くことに着目しいているのだ。
で、なんで本来は不利に働くはずの特質を持っているオスがもてるのか、という説明として、そういう不利な条件を持ちながらも生存しているオスは、「きっと」他のオスより生存能力が高いから生き残っているに「違いない」とメスが本能的に考えるからだ、とするんだよね。
つまり、多少のハンディキャップがあっても他のオスと変わりなく生き残っているということは、その他の面で他のオスより優れているはずだ、という理屈なわけ。
さすがに人間には当てはめづらいけど(笑)、動物の世界ではけっこうこの説明でしっくり来ることが多いんだよね。
「色男、金と力はなかりけり」っていうのはこういうことかな?
もう一つは、「赤の女王仮説」。
これはルイス・キャロルさんの「鏡の国のアリス」(ハンプティ・ダンプティや白の騎士なんかが出てくるやつね。)の登場人物の赤の女王が「その場にとどまるためには全力で走り続けなければならない」ということを言うことにちなんでいるのだ。
進化における「赤の女王仮説」とは、生物としては進化が止まっているように見えても、時々刻々変化するまわりの環境に適応するためには進化し続けないといけない、ということを指しているんだよ。
カブトガニやシーラカンスは生きる化石と言われるけど、別にずっとむかしから進化していないわけじゃなくて、ずっと進化をし続けて、なおかつ、むかしの姿を保っている、ということなのだ。
進化から取り残されると、まわりの環境に適応できなくて、種としては絶滅してしまうのだ!
これは病原体との関係や、捕食者との関係でよく説明されるんだ。
例えば、病原菌が進化すると病気にかかる生物は進化してその病気にかかりにくいようになるのだ。
すると更に病原菌はその生物に感染しやすいように進化する、という「いたちごっこ」が続くので、ともに進化をし続けるというもの。
捕食者と被食者の関係でも同じで、食べられまいと被食者の足が速くなると、捕食者も足が速くないと獲物が捕まえられないから足が速い個体が残っていく、ということなんだよ。
これは環境の変化に対しても同じで、常に進化し続けて、環境に適応した個体だけが残って、それ以外は淘汰されていく、ということなんだ。
実は、遺伝情報レベルでは常に変化が起こっていて、遺伝情報の本体であるデオキシリボ核酸(DNA)の複製には一定の確立で複製エラーが起こるのだ。
で、これは遺伝子の内容(タンパク質のアミノ酸配列や遺伝子発現を制御する情報など)を変えるものもあるし、まったく関係ないところが変わるだけのものもあるんだけど、DNAの分子レベルでは常に変化が起こっていて、常に遺伝情報としては多様性が生み出される状態になっているのだ。
で、その多様性の中には、環境が変わったときにより適応しやすいものもごくごくまれにあって、そういう遺伝状をを持っている個体が自然淘汰で生き残っていく(自然選択される)ということなんだ。
有性生殖と無性生殖の有利・不利という話とも関係があって、自分の遺伝情報が100%子孫に伝えられるという意味では無性生殖にメリットがあるんだけど、この環境の変化への適応を考えると有性生殖の方がメリットが出てくるのだ。
オスとメスの両方から遺伝情報を受け継いでシャッフルするわけだけど、それで遺伝情報にはより多様性が生まれるので、環境の変化には「強い」ということなんだよ。
例えば、ある環境の変化に対して2つの遺伝子が変化しないといけないとした場合、無性生殖では2回遺伝子の変化が発生しないと適応できないんだけど、有性生殖ではそれぞれ別の遺伝子が変化したオスとメスが子供を作ればよいので、1回の遺伝子の変化ですむことになるのだ。
これが有性生殖のメリットで、生物としてのシステムが複雑になればなるほど世代交代に時間がかかるので、有性生殖の方がより有利になるというわけ。
大腸菌は30分周期で細胞分裂できるけど、ほ乳類は10年はたたないと世代交代しないからね。
こうやって進化の話を調べていくとおもしろいんだよね。
すっごく複雑なシステムなんだけど、原理は単純で、多様性の中から適したものが選ばれる、というだけなのだ。
このシステムが自然に発生したのか、神が作ったのかはよくわからないけど(笑)、現象論としてはとても興味深いよ。
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