2007/07/18

二足歩行

今日新聞を読んでいると、米国科学アカデミー紀要(PNAS:Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America)にこんな記事が載るというのを見つけたのだ。
二足歩行のエネルギー消費について調査したもので、チンパンジーの二足歩行とナックル・ウォーキング(手をつけて歩くサル独特の四足歩行)と、人間の二足歩行のエネルギー消費を比べているんだ。
結果的には、チンパンジーでは二足でも四足でもそんなに差はないけど、人間の二足歩行はチンパンジーに比べて消費エネルギーが4分の1程度という結果だったのだ!
これは、人間は二足歩行にとても適した体の構造をしているからなんだって。
サルに比べて長い足や、骨盤の形状、おしりの筋肉なんかが関係しているみたいだよ。

生物の中では人間のほかにも二足歩行をするものがいて、鳥なんかは羽は飛ぶときにしか使わないから、二足歩行と言えなくもないんだよね(笑)
もっと二足歩行らしい二足歩行としては、クマやサルが立ち上がって歩くものがあるのだ。
それに、恐竜の中にもティラノサウルスのように二足で歩いていたと考えられるものもいるし、カンガルーなんかは二足で跳躍するよね。
でも、これらの動物はたいてい背中が曲がっているか前傾姿勢になっていて、重心は低いままなのだ。
人間の二足歩行とは少し違うので、人間のように背筋が伸びたものを特別に「直立二足歩行」と呼ぶそうだよ。

直立二足歩行の代表は人間とペンギン。
ここでも鳥類が出てきてしまうんだけど(笑)、ペンギンの場合は後ろ足が体の側面についていて、体ごと揺らしてよちよちと歩くことになるのだ。
体全体と足の動きが連動してしまうわけ。
人間は胴体の真下に足がついているので、腰のところで足を動かすことによるゆれは吸収できるので、上半身をまっすぐにしてあることができるのだ。
これが大きな違い。
こういう歩き方をするのは人間だけなんだよ。

でも、この歩き方は四足歩行に比べると重心が高い位置に来ることもあって不安定だし、走る速度も極端に遅くなるのだ。
カール・ルイスさんよりチンパンジーの方が走るのは速いんだよ!
カバでさえ本気で走ると時速40kmというから、時速約36kmのカール・ルイスさんはかなわないのだ・・・。
それと、腰からおしりにかけての部分で上半身の重みを支えることになるので、負担がかかっていて、他の動物のかからない「痔」という病気を発症するようになったのだ。

これまでの研究では、サルの場合は四足歩行でも二足歩行でもそんなに消費エネルギーは変わらないという結果が得られていたので、そういったデメリットの部分は常に手が使えるというメリットで乗り越えたんだろうと思われていたんだよね。
いつも手に道具を持っていられるので、それが生存上有利だったという考え方。
でも、今回の研究で、実はエネルギー的に「得」だったということがわかったのだ。
進化の話は現在の視点で見てしまうのでどうしても「合目的的」に考えてしまうんだけど、実際にはいろんな変化がランダムで発生していて、そのうち生存に有利なものが残っていくという「自然選択」が基本なんだよね。
それを思い出して今回の結果を考えると、たまたま後ろ足が長くなったり、骨盤の形状が二足歩行に適したような類人猿が出てきて、その類人猿は四足歩行より二足歩行する方がエネルギー的に有利なので、そうするようになった、と考えられるのだ。
すると、歩くのに手を使わないから、別のことに使う、というようになるよね。
なので、手を使うために二足歩行になったんじゃなくて、二足歩行になったから手を使うようになった、と考える方がおそらく適切なのだ。
逆なんだよね。

さすがに猿人や原人で同様の実験はできないから(笑)、化石の形状なんかで判断するしかないんだけど、アウストラロピテクスなんかはすでにより人間に近い形状に変わっているようなので、そういう面でもこの説は補強されるみたい。
こういう話は証明できないからデータを積み重ねて推測していくしかないんだけど、今回の発見はボク的には「目からウロコ」だったのだ。

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