2007/11/22

海の中をただよう

ボクはけっこうクラゲが好きなんだよね。
食べるクラゲも好きなんだけど(笑)、ふわふわと優雅に浮かんでいる姿がよいのだ。
何にも考えずにぷかぷかしながら流れに身を任せたいこともあるよね。

クラゲはイソギンチャクやヒドラと同じ刺胞動物の仲間で、イソギンチャクのように定点に固着せず、浮遊生活をするものの総称のようなのだ。
なので、分類学上はいろんな種類がまとめてクラゲと呼ばれていて、クラゲという分類があるわけじゃないみたい。
たしかに食べるエチゼンクラゲと時に致命的になる毒を持っていることで有名なカツオノエボシではけっこう形が異なるよね。
昭和天皇が相模湾で採取したことで有名なコトクラゲ(むかしは江ノ島水族館に展示されていたけど、新江ノ島水族館にもあるのかな?)は、有櫛動物(クシクラゲ)という別の種類の動物みたい。
似たような形状で浮遊生活をしているんだけど、刺胞動物の最大の特徴である刺胞を持っていないなど大きく生態が異なるようなのだ。

刺胞というのは読んで字のごとく「刺す細胞」のことで、クラゲやイソギンチャクの触手にあるんだよね。
普段は細胞の中に毒を流し込む針が埋め込まれているんだけど、外からの刺激があるとバネのように伸びて刺すのだ。
これがなかなかよくできた構造で、触れた途端に自動的に針が飛び出して刺す仕掛けになっているんだよね。
これがお盆を過ぎた海水浴場でよく見られる、クラゲに刺された水ぶくれの原因となるのだ。
針のついた触手をはずすときはそのままさわるとまた刺されるので、タオルなどで取り除くことが重要なんだって。
また、洗うときは真水で洗うとさらに毒針が発射されるので(たぶん浸透圧の関係だよ。)、塩水や食用の酢で洗わないとダメらしいよ。

クラゲの一生はなかなかおもしろくて、ずっと浮遊をしているわけではないのだ。
クラゲにはオスとメスがあって、卵を産むんだよね。
卵からかえった幼生(プラヌラ)はイソギンチャクのように岩などに定着してポリプと呼ばれる状態になるのだ。
そこで大きくなるんだけど、このときポリプはくびれていってお椀を重ねたようなストラビラという状態になるんだけど、そのお椀のひとつひとつがはがれて、エフィラというものになって浮遊を始めるんだよね。
なので、ポリプの状態では無性生殖でも増えるのだ。
このエフィラがやがていわゆるクラゲになるというわけ。
種類によって違いはあるらしいけど、だいたいこういうサイクルをたどるようなのだ。

クラゲはぷかぷか浮かんでいるだけのイメージだけど、かさの部分を動かす筋肉があって、それによって自発的に動くことも可能みたい。
でも、基本的には方向転換をするときくらいしか動かさないで、流れに任せて浮かんでいるようなんだけど(笑)
なので、クラゲを飼育するときは注意が必要で、常に下から上に水流があるようにしてあげないといけないのだ。
底の方に沈んでくると自分で浮かび上がることもできるんだけど、あまりそれをさせると衰弱して死んでしまうので、ただよっているだけで沈まないように適度な水流を与えて上げるのが重要なわけ。
市販のクラゲ飼育セットでは必ずそういう仕掛けになっているよ。

日本と中国ではエチゼンクラゲやビゼンクラゲなんかを細切りにしてから乾燥させて、塩漬けにしたものを食材にしているのだ。
水でもどし手塩を抜いて食べるわけだけど、こりこりしていてなかなかおいしいよね。
ボクはあの独特の食感がなかなか好きなのだ。
日本では和え物や酢の物、松前漬けくらいでしか見ないけど、中国ではもっといろんな料理に使うみたい。
するめなんかも重曹を入れた水でもどして使うんだって(アルカリ性の水でもどすと生イカ並にやわらかくもどるそうなのだ。)。
きっと内陸部で海産物を食べるための知恵としてこういう乾物の食べ方が発達したんだろうね。
乾物にする海産物の種類も乾物を使う料理も多いし、どこでもたいてい海が近い日本とはやっぱり文化が違うのだ。

クラゲは食べるだけじゃなく、最先端の分子生物学でも活躍しているんだよ。
オワンクラゲというクラゲからとられた蛍光性タンパク質のGFP(Grenn Fluorescence Protein)は緑色の蛍光を出すタンパク質で、分子生物学のマーカーとしてよく使われるのだ。
一時期蛍光で光るネズミが話題になったけど、それはこのGFPを遺伝子導入したネズミなんだよ。
細胞を使った実験などでもよく使われているみたい。
ただただよっているだけじゃなくて、そういうところでは活躍しているんだね(笑)

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