絵の具
米国に来てから無料で見られるのをいいことによく絵を見に行くようになったんだけど、いろいろな絵の具があることに気づいたんだよね。
水彩や油彩、日本画の顔料なんかも知ってはいたけど、水彩にも油彩にも種類があるようだし、アクリル絵の具なんてのもあるんだよね。
それぞれ特徴があって、使い分けられているようなのだ。
絵の具は色のついた粒子(顔料)をその粒子を溶かして画面に付着させる媒剤からなるのだ。
媒剤が水だと水彩、油だと水彩というわけ。
水彩絵の具は当然水に溶けるものでないといけないし、油彩絵の具は油に溶ける又は懸濁できるものであることが必要なのだ。
で、この媒剤が蒸発して乾燥すると、画面上に絵の具だけが残って、絵が完成するというわけ。
一般に水彩は油彩に比べて乾くのが早いし、重ねぬり(色の重ね)なんかもできるし、ぼやかしたり、にじませたりすることもできるという特色があるんだよね。
水彩といえば学校の美術の時間でも使うけど、あのチューブに入った絵の具は顔料の粉とアラビアゴムを混ぜたものなんだって。
それを水にといているのだ。
で、水彩絵の具には、透明感のあるウォーター・カラーというやつと、ポスター・カラーなどの不透明なやつもあるのだ。
学校で使っているのはその中間のマット水彩というやつなんだって。
ウォーターカラーだと均一な色にぬるのが難しいけど、ポスター・カラーだとけっこうきれいに均一にぬれるんだよね。
これはポスター・カラーが不透明で下の色を透かさないからで、その分、色の重ねやぼかしができないということなんだよね。
ちなみに、ポスター・カラーは顔料自体が異なることもあるけど、アラビアゴムの比率が違うということが大事みたい(一般的に不透明なポスター・カラーの方がアラビアゴムが少ないみたい。)。
ちなみに、日本画に使う粉末状の絵の具の岩絵の具(辰砂やクジャク石、ラピスラズリなどの粉末)はにかわにとかして画面に付着させるんだけど、これも水彩に分類されるみたい。
中世からルネサンス期の精密な風景画や宗教画に使われていたのはテンペラというもので、乳濁液を媒剤としたものなのだ。
水性の溶媒の中に油性の粒子を分散させたものと、油性の溶媒の中に水性の粒子を分散させたものがあるんだよね。
有名なのは卵の卵黄で絵の具をといた卵テンペラで、卵の黄身は水性の溶媒の中に油の細かい粒子が分散しているんだけど、この油の粒子の中に親油性の顔料を入れて色を出すのだ。
壁画にはあんまり向かないもので、油彩の登場によって徐々に廃れていってしまうのだ。
美術館でよく修復しているのがこのテンペラがだけど、時間が経って劣化してくるとぼろぼろと絵の具が鱗状にはがれ落ちてくるんだよね。
で、20世紀になると、アクリル樹脂の乳濁液(エマルジョン)を媒剤とした絵の具が登場するんだけど、これがアクリル絵の具。
水彩ではぬりにくい紙粘土などにもぬれるのだ。
乾くのもわりと早くて、水彩と同じように重ねぬりしたり、ぼかしたりすることもできるんだ。
水彩絵の具は乾いた後もぬれるとまた絵の具が溶け出して絵がダメになっちゃうんだけど、アクリル絵の具はその点も大丈夫なのだ。
水彩のようにも油彩のようにも使えるというのが特徴みたい。
日本のお家芸のひとつの漆器も漆をぬっているんだけど、漆も乳濁液になっていて、テンペラやアクリル絵の具と同じような絵の具なのだ。
むかしは赤い漆と黒い漆くらいしかなかったけど、最近ではいろんな顔料を混ぜることができるようになって、彩漆なんていって、かなり多色にできるようになったみたい。
でも、伝統的には赤か黒の漆に金や銀などをはめ込むんだよね。
このときは絵の具としてだけでなく接着剤つぃても使っているのが特徴なのだ。
漆は天然の樹脂だから、アクリル絵の具と同じようななものと言えばそうなんだけど。
最後の油彩は文字どおり油にとくから油彩なんだけど、ここで使う油は乾性油という特殊なものなのだ。
これは酸化してくると硬質化(重合)する油で、絵の具ごと油がかたまってしまうというわけ。
でも、酸化して化学反応しないとかたまらないので、油彩の乾燥にはとても時間がかかるのだ。
ゴッホさんの絵のようにキャンバスから立体的にぬった後がわかるようになっているのが油彩の特徴だよ(あそこまで絵の具をぬりつける必要性は必ずしもないのだけど・・・。)
乾燥時間が長いので、その間に微妙に色を混ぜてみたり、途中で拭き取ったりする尾kとができるのが特徴で、仕上がりも少しぬれた感じの光沢のある仕上がりになるのだ。
でも、油がかたまるときに少し黄色くなるので、白い色をぬったつもりでもクリーム色になったりするんだよね。
これは普通の食用油が酸化してくると黄色くなるのと同じ現象なのだ。
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