2007/11/28

海のミルク

ワシントンDCは南北で言うとだいたい真ん中あたりにあるんだけど、地域区分だと南東部とされることが多いのだ。
でも、気候的には北東部に近いので、食文化もそうなっているんだよ。
海はないけど川があって海からもそんなに遠くないので、シーフードはわりと有名で、ボストンほどじゃないにしても、エビやカキは名物になっているのだ。
今回はそんなカキについてちょっと調べてみたよ。

カキは岩などにへばりついている二枚貝で、海の底の岩から「かきおとす」ことからカキと呼ばれるようになったんだって。
漢字では牡蠣と書くけど、本当は「蠣」だけで「カキ」という意味になるらしいのだ。
でも、わざわざ「オス」をつけるんだよね。
そのむかしは、一般に貝には雌雄で色の異なる部分があって、それが白いとオスと考えられていたらしいんだけど、カキの場合は全身が白いので、メスがいないオスだけの貝だと考えられていた、というのがその理由なんだそうだよ。
ものすごい話なのだ。

カキは「r」のつかいない月、つまり、5、6、7、8月は食べられないというけど、これはマガキの話で、マガキはこの時期に産卵期で生殖器が発達して食用とはならないためなのだ。
でも、もう少し大型のイワガキは別にこの時期でも食べられるので、基本的には1年中食べられるんだよ(イワガキもマガキ同様養殖できるのだ。)。
イワガキは夏に食べられるので「夏ガキ」とも呼ばれるようなのだ。
少し大型で、殻が緑色っぽいんだよね。

でも、カキの殻は岩にへばりつきながら成長していくので、形も表面のデコボコも一定じゃないのだ。
なので、カキの種類の分類はものすごく難しくて、分子生物学的に遺伝情報レベルで詳しく調べているそうだよ。
ひょっとするとまだ未分類の種類が隠れていたりして。
この殻にはしましまがあることが知られているけど、これは木の年輪のようなもので、カキの殻の成長線なのだ。
ハマグリやアサリでも見られるけど、ハマグリやアサリはきれいに貝殻の形がその形のまま大きくなっていってるのに対し、カキはへばりついた岩の形状で殻の成長の仕方が違うからこの線もランダムな曲線に見えるんだよね。

カキの栄養はなんと言っても豊富な亜鉛。
全食品中でずば抜けて多いのだ。
カルシウムなんかの他のミネラルも多いみたい。
それと、うま味があることからわかるようにアミノ酸やグリコーゲンもたくさん含んでいて、お菓子のグリコ(キャラメル)はそれまでは捨てられていたカキの煮汁からグリコーゲンを抽出してキャラメルに混ぜて作られていたんだよ。
グリコのグリコはグリコーゲンのことなのだ。
一粒300mは、ひとつ部分の栄養素がちょうど300mを全力疾走するときに必要なエネルギー量だからなんだよね。

カキといえば天然物と養殖物があるけど、日本では縄文時代から食べられ始め、室町時代にはすでに養殖が始まっていたとか。
カキは欧米でも生食される珍しい魚介類なんだけど、欧州原産のカキのヨーロッパヒラガキは1970年代以降寄生虫などの害で激減し、現在は日本山のマガキを輸入して養殖しているんだって。
なので、フランスで生ガキを食べても日本のマガキかもしれないのだ!
ちなみに、英語のoyster、フランス語のhuitreは日本語のカキよりも少し広い概念で、岩にへばりついている不定形の二枚貝で、表面がなめらかでないものはみんなそう呼ぶみたい。
なので、そもそもカキとはまったく異なる種類の貝も含まれるらしいよ。

欧米の人は生ガキが好きだけど、ボクはやっぱりカキフライが一番好きだね。
基本的に熱を通した方がうま味は増すのだ。
でも、魚介類は長時間熱を通すとかたくなってしまうので、カキ鍋だと煮すぎる可能性があるんだよ。
その点、カキフライだとさっと瞬間的に火を通すことができて、かつ、衣でカキのうま味も閉じこめることができるので、かなりおいしく食べる方法なのだ。
最初に考案した人は偉いよ。

ちなみに、カキには生食用と加工用があるけど、これは必ずしもカキの新鮮さによる分類ではないのだ。
むしろ、生食できるかどうかは病原性を持った微生物やウイルスの存在の有無で決まっていて、最近やウイルスは多くの場合生育環境である海水に由来しているんだって。
なので、生食用のカキの場合は、汽水域で植物性プランクトンを豊富に食べたカキを紫外線滅菌された介す一中で数日間飼育し、その間に断食させて無菌状態に近くしているんだって。
こうすると病原体はいなくなるので生食できるようになるんだけど、その分身がやせてしまうので、加工用のものの方がおいしかったりすることもあるみたい。
当然、海水がとてもきれいなら天然物でも生食できるんだけどね。

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