2007/12/10

掛けて見る

今日はDCの美術館で日本の掛け軸をたくさん見てきたのだ。
江戸期から明治期にかけてのものだけど、やっぱりいいねぇ。
ボクは浮世絵とか掛け軸とかの絵がけっこう好きなんだよね。
シンプルなデザイン、淡い色づかい、雄々しいタッチなんかがお気に入りなのだ。

この掛け軸というのは中国の北宋時代に壁に絵などを掛けるものとして生まれたようで、はじめは礼拝の意味合いが強いと考えられているんだって。
西洋でもキリストやマリア、諸聖人の絵を壁に掛けたりしているけど、それと同じなんだろうね。
掛け軸は比較的複数生産することも容易で、丸めると持ち運びも便利なので、仏画を中心に普及していったんだって。
日本にも飛鳥時代には仏画の掛け軸がすでに入ってきていたみたいだよ。

日本ではもっぱら仏画を中心としていたんだけど、鎌倉時代になって禅宗が入ってくると、仏画だけじゃなくて水墨画や書、禅絵(ただの○を描いた円相図や禅宗の公案を絵にしたもの、達磨禅師などの絵など)なども飾られるようになったんだって。
これに茶の湯の文化が加わると、一気に掛け軸の文化が花開いて、花鳥風月をテーマにしたものや一般の人物を描いたもの、風景画なども登場してくるのだ。
これで一気に床の間に飾る芸術品としての地位をかためることになるんだよね。
今の掛け軸の表層(いわゆる絵をはってある布の部分)の様式や寸法も、床の間に飾って美しく見えるように、という配慮で茶道の中で確立したらしいよ。

江戸時代になると日本に明朝式表具が普及し、大きな家では茶室がなくても床の間が作られるようになったので、さらにある程度裕福な層に普及していくのだ。
表層の生地などにもこり始めて、日本を代表する美術品へと昇華していったようなのだ。
明治・大正期は日本画の隆盛期でもあったので掛け軸も発展・普及していったらしいんだけど、昭和になって戦争をはさむとそれどころじゃなくなってしまい、戦後は家の西洋化が進んで床の間も消えていっているのでだんだん存在感が薄れてきているのだ。
今ではまたむかしのように一部の裕福な人のもの、というイメージが強いよね。
アニメのサザエさんは庶民を描いたアニメだけど、古き良き昭和の時代の生活を描いているので、床の間と掛け軸があるのだ。
現代では好意状況はあまり見られなくなって残念だよね(そもそも日本間自体が消えてきているのは悲しいことだよ。日本までこたつに入りながらみかん、なんてのはなかなか日本らしくてよいと思うんだけど。)。

掛け軸として飾られる絵にはいくつか種類があって、むかしながらの仏画(お釈迦様や観音菩薩が多いよね。憤怒の形相の明王なんかもあるのだ。)、山水画(いわゆる中国式の大和川を題材にした風景画だよね。)、花鳥画(いわゆる花鳥風月の絵だけど、これが一番掛け軸っぽいイメージだよね。)、墨跡(禅僧の書で、一休禅師なんかが有名だよね。)、古筆(平安から鎌倉時代にかけての字のうまい人の書で、小野道風さんや橘逸勢なんかが有名だよね。)、色紙(武者小路実篤さんの「仲良きことは美しき哉」はよく見かけるのだ。)、短冊(俳句や和歌を書いたものが多いのだ。)、画賛(絵の上の方に漢詩や和歌などが添えられているものだよ。)、消息(いわゆる手紙のことで、有名人の達筆な手紙などを飾るのだ。)、断簡(巻物の一部だけを切り出して掛け軸にしたもので、よく伊勢物語や源氏物語なんかの絵物語の一部が使われるんだよね。)などが代表的なんだって。
掛けっぱなしではなくて、来客に応じて変えたり、季節や朝昼夜に応じて変えたりするものらしいよ。
さすがに庶民はそこまで多くの掛け軸は持っていないから万年掛け軸だろうけど。

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