広報はこれにお任せ
日本政府の公報媒体と言えばなんと言っても官報なのだ。
お役所の営業日には毎日発行されていて、特別の事情がある場合は土日や休日でも特別号外という形で発行されるんだよ。
主要都市の政府刊行物センターや都道府県庁所在地の官報販売所などで売っているほか、過去1週間分はインターネットでも閲覧できるのだ。
今では独立行政法人になった国立印刷局が発行しているんだよ。
官報が創刊されたのは明治16年。
山県有朋さんの建議で発刊されることとなり、官報に書いてる題字の「官報」の文字は時の太政大臣の三条実美さんの書らしいよ。
当時は太政官文書局が編纂し、大蔵省印刷局が印刷、農商務省駅逓局が配送していたんだって。
それまで政府からのお知らせは江戸時代と同様に高札(つまりは立て札)により行っていたんだけど、新しく法律がどんどんできはじめる明治になると、板に墨書きで作る立て札は製作と維持にコストがかかるので、明治6年には廃止されてしまうんだって。
これに代わって太政官が法令を府県に配布して、それを印刷して町村の役場に配布・掲示する方式をとったんだけど、これだと法令の公布に2ヶ月以上も要して緊急の法整備ができないので、もっと早く公告する必要があったのだ。
そこで出てきたのが政府自らが新聞を発行するというアイデアなんだけど、これを推進していた大隈重信さんが失脚してしまったため、この構想は立ち消えになるのだ。
で、プロシアやロシアの制度を参考に、官報が作られることになったんだって。
官報では新しく作られた法令が掲載されて、それをもって「公布」されたと見なされるんだけど、実は現行法令では官報で公布しなくちゃいけないっていう規定はないんだよね。
戦前は勅令により法令の公布は官報で行うことと定められていたんだけど、日本国憲法の施行でこの古い勅令は廃止されてしまって、その後公布をどのように行うかを規定する法律が作られなかったのだ。
でも、一般的には法令の公布は官報の掲載をもって行われると認識されていて、最高裁の判決でも、他の適当な方法で公布を行うことが明らかな場合でない限りは官報をもって公布を行うのが妥当と解釈される、という見解を示しているらしいよ。
日本の法律にはよく「××は、○○を定めたときはこれを公布しなければならない」なんて規定があるけど、行政法の世界ではこの「公布」は一般的に「官報の掲載をもって広く周知すること」と考えられているそうだよ。
官報には法令だけじゃなく、実はいろんな情報が載っているのだ。
大きく分けると公報と公告に分かれているよ。
法律や政令、各省庁の定める府令(内閣府のみ)・省令(各省)・庁令(海上保安庁のみ)、人事院や会計検査院、公正取引委員会の定める規則、各省庁の内規の訓令、各省庁が行政機関として一般に提示する告示(これには法的拘束力はないけど、法定義務として広く公示することが求められているものやガイドラインとして示すものなどが含まれるのだ。)などのいわゆる法令が掲載されるんだよね。
その他の公報としては、国会事項(開会や閉会、議事日程、議案・質問主意書の提出など)、人事異動(公務員幹部や行政委員会の委員の人事異動のほか、大臣の海外出張に伴う臨時代理の指定なんてのもあるよ。)、叙位・叙勲・褒章、皇室に関する事項(行幸啓や一般参賀に関することなど)、官庁報告(国家試験の実施・結果、公聴会の開催、地価の公示など)、資料(閣議決定事項や国際収支など)があるのだ。
公告は、各省庁の公告(押収物の還付や建設業の許可の取消などの処分)、WTOの政府調達協定に基づく政府調達(公開競争入札にかけられる政府調達だよ。)、特殊法人の公告(日本銀行営業毎旬報告や日本道路公団工事開始・完了など)、地方公共団体の公告(公債抽選、公債償還、行旅死亡人など)、裁判所の公告(除権判決、破産、会社更生関係など)、会社の公告(合併公告、決算公告)があるのだ。
行旅死亡人というのはむかしで言えば「行き倒れ」で、身元不明の死体が発見されたときに地方自治体が公告を出して、遺族などの引き取り手を待つことになるのだ。
で、裁判所の方では失踪に関して公告していて、ある人が失踪したと申し立てられるとその情報が官報に載るんだよ。
その他、裁判所の公告は相続関係(相続管財人の選任など)や破産に関すること、競売(けいばい)に関する情報なんかが載るんだ。
最近では会社の決算を官報で公告することを推奨していて、決算の時期の官報は号外がたくさん出て分厚くなるのだ。
※国会の会期末や年度末で公布される法令が多いときも分厚くなるよ。
意外と見てみるといろんな情報が載っていてびっくりするのが官報。
官報のPRとして、官報を見ると時代がわかる、なんてのがあったけど、法律の動きはよくわかるし、主要な会社の決算なんかも載るから、隅から隅まで通せばそうなのかもね。
ま、新聞の報道を見た方が早いような気もするんだけど(笑)
それでも、ときどき見てみるとけっこうおもしろいよ。
0 件のコメント:
コメントを投稿