たこあげは電線のない広い場所で!
お正月になると見かけるCMと言えば、「おせちもいいけどカレーもね」のハウス食品のCMと、「たこあげをするときは電線のない広い場所で」という電力会社のCMなのだ。
たこが電線に引っかかった場合は自分でとろうとせずにかならず電力会社に連絡してください、っていうんだよね。
CMは毎年変わっているけど、言っている内容はボクが子どものころからまったく同じなのだ。
いわゆる街中にある電柱の上にある電線は配電線というやつで、電車に乗っていたり、高速道路を走っていたりする時に見かける鉄塔を結んでいる電線が送電線というやつなのだ。
送電線はいわゆるネットワークの部分で、電力の供給区域をカバーするように広がっているのだ。
各発電所はこのネットワークにつながっているんだけど、ネットワークの安定性を保つために、1ヶ所送電線が切れてもネットワーク全体に大きな支障が出ないようにうまく網目が作られているんだよ。
発電所もネットワークに電気の流れの偏りが出ないようにバランスよくつながないといけないのだ。
1ヶ所に電気が流れすぎるとその熱(ジュール熱)で電線がとろけてしまうんだよね。
通常はネットワークの基幹線は20,000ボルト以上の電圧で、日本で最高の電圧の電線は新潟の柏崎刈羽原発と東京電力管内をつなぐ100万ボルトの電圧の送電線なのだ。
こんな電圧の高い送電線は世界でも珍しいみたいだよ。
他の電力会社(沖縄を除く)の一番太いネットワークは50万ボルトで、発電所からネットワークに入る手前で昇圧して、高い電圧の電気を流すネットワークにするんだけど、ネットワークの辺縁に行くほど徐々に電圧が下げられていくのだ。
電圧を高くするのは電気を長距離流すときに熱などとして失われるエネルギー・ロスを少なくするためだよ。
で、この送電線ネットワークから電力の消費者(需要家)のところまで電気を運ぶ電線が配電線で、送電線から直接20,000ボルト以上の電圧で供給を受けるのが特別高圧というやつなのだ(契約電力は2,000kW以上だよ。)。
大きな工場や大規模なデパート、ショッピング・モールなんかがこれに当たって、自前で大きな変圧器を持っていて降圧してから電気を使うのだ。
これより少し低い電圧、3,600~6,600にしてから、需要家のところで600ボルトにして配電するのが高圧(契約電力は50kW以上2,000kW未満)で、中規模の工場や中小ビル、スーパーなんかがこれに当たるんだ。
特別高圧は基本的にそのままネットワークからそのまま電気を引き込む感じだけど、高圧の場合はある程度まとめてで夏を落としておいて、そこから様々な需要家に配電するのだ。
さらに電圧を落として100~200ボルトで配電するのが低圧(契約電力は50kW未満)で、これは電柱の上のゴミバケツのような変圧器で電圧を落とすんだよ。
コンビニなんかがこれに当たるのだ。
いわゆる一般家庭の電気は電灯需要というやつで、むかしは照明が主要な電気の使用先だったのでこんな名前になっているみたい。
基本的には一般家庭は100ボルトで配電されていて、プラグに差し込むと100ボルトの交流の電気が得られるのだ(米国では120ボルトなんだよね。)。
電柱はこの低圧と電灯需要を供給するための低圧配電線を支えるもので、さらにそこから引き込み線で各需要先へ電気を送るんだよね。
日本では現在高圧と特別高圧が自由化されていて、電力会社以外からも電気が買えるのだ。
でも、送電線ネットワークと配電線は電力会社の所有物なので、これを借りないといけないんだよね(電力会社の電線で電気を運んでもらうことを「託送」と言うのだ。)
米国や欧州だと、送電線ネットワークはいわゆる電力会社から独立した運用者が管理していて、電力会社は配電線だけを持っていたりするのだ。
電気の自由化分野の競争を適正化するために、送電線・配電線事態は電力会社が所有しているけど、差別なく競合会社にも使わせてあげないといけない規制になっているのだ(電話線の場合と同じだよ。)。
いずれにしても、電線は電力会社のものなので、たこが引っかかったら連絡するのは管理している電力会社なのだ。
ちなみに、日本の場合は各電力会社ごとにネットワークが形成されていて、日本全体が大きなネットワークになっているわけじゃなく、小さなネットワークが並んでいるというイメージなのだ。
ネットワークの間は連系線と呼ばれる特別な電線でつながっていて、ここを流せる電気の量には限りがあるので、ひとつの大きなネットワークとしては機能しないのだ。
それに、東日本と西日本では電気の周波数も異なっていて、東では50Hz(北海道、東北、東京)、西では60Hz(中部、関西、北陸、中国、四国、九州、沖縄)なんだよね。
これは東京と大阪でそれぞれ発電事業が始まったときに導入した発電機の違いに由来していて、明治以来、統一できないで現在に至っているんだよね。
0 件のコメント:
コメントを投稿