2008/01/24

人間ではあんまり活躍してないんだよね

英語の本を読んでいると、いわゆる「付録」とか「補足」の部分は「appendix」となっているんだよね。
これはもともと「盲腸」やそこからぶら下がっている「虫垂」を意味する言葉で、まさに本体にぶら下がっているのでそう呼ばれるのだ。
よく盲腸はあってもなくても同じようなものなので外科手術で摘出してしまっても支障はないと言うけど、いわゆる盲腸という病気で炎症が発生していて切除されるのは虫垂の部分なのだ(なので「虫垂炎」と言うんだよね。)。
虫垂にはリンパ節が集まっているから炎症が起こるんだよ。
放っておくと腹膜炎になるので、薬で対応することもできなくもないけど外科手術で切除してしまうのが主流なのだ。

盲腸は大腸の一部で、十二指腸、空腸、回腸と続く小腸につながっている部分で、盲腸から先は上行結腸、横行結腸、下行結腸、直腸と続いているんだよ。
大腸では、腸内細菌による食物繊維の発酵と水分の吸収が主に行われているのだ。
小腸の場合は吸収された栄養素はそのまま門脈に入って肝臓を通って全身をめぐるので、小腸自体のエネルギーは動脈から供給されるんだよね。
でも、大腸の場合は細菌が分解して作った短鎖脂肪酸などの栄養素を吸収すると、それをそのまま自分のエネルギーにして、あまった分を全身に回すというシステムになっているのだ。
なので、組織標本なんかを見るとよくわかるんだけど、内部の構造がだいぶ違っていて、小腸は絨毛と呼ばれる細かい突起がたくさんあって、それで表面積をかせいでできるだけ多くの栄養を吸収するような仕組みになっているんだけど、大腸の場合はこの絨毛がなくてかなり平坦なのだ。
大腸は水分を吸収するのが本務で、ついで栄養素も吸収してあわよくばそれを使う、という思想なんだろうね。

で、まさに盲腸の部分で細菌による食物繊維の発酵が行われるんだけど、人間の場合は雑食で別に食物繊維から多くの栄養をとらなくても生きていけるのであまり盲腸が発達していないのだ。
でも、草食動物にとってはまさに死活問題なので、盲腸がとても長くて、特に重要な消化・吸収器官になっているんだよ。
同じネズミの仲間でも、主に植物をエサとするウサギやモルモットでは盲腸が発達していて長く、何でも食べるラットやマウスだと人間と同じようにあまり発達していないのだ(それでもけっこう大きかったりするんだけど。)。
ベジタリアンの人たちがベジタリアン同士でずっと結婚し続けると、ひょっとすると盲腸の長い人間に進化するかもしれないのだ(笑)
きっと数百年じゃきかない年月がかかると思うけど。

でも、この大腸での発酵というのは実はけっこう重要で、血が固まるときに必要なビタミンKなんかは腸内の微生物が作ったものを吸収して使っているんだよ。
納豆などの発酵性食品なんかにも含まれているけど、通常は腸内で作られたものを使っているのだ。
ビタミンだけじゃなくてメタンガスなんかも作り出すので、おならが臭くなる原因にもなっているんだけどね。
腸内細菌というとどうしても大腸菌を思い浮かべがちだけど、大腸菌は大腸で見つかったのでそう呼ばれているだけで、腸内細菌の中での比率は0.1%ほどととても少ないそうだよ。
むしろ乳酸菌なんかの方が多いのだ。
抗生物質を飲み過ぎると、本来必要な細菌が死んでしまって、有害だけど薬剤に耐性を持っている細菌が増えてしまったりして腸内細菌のバランスが崩れたりするのだ。
なので、あんまり抗生物質に頼りすぎるのもよくないんだよね。
おなかの健康を保つためには、よく食物繊維をとって、腸内細菌が発酵して栄養素を作れるようにして上げることが大切なのだ。

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