海の黒
欧米ではほとんど食べないんだけど、今日はDCのFish Wharfでイカとタコを売っているのを見かけたのだ。
日本や中国、朝鮮半島ではよく食べるので、東アジアではメジャーなんだけど、ユダヤ教ではイカやタコを食べるのを禁止していたりするし、イスラム教でもキリスト教でもあまり食べないようなのだ。
イカはまだ食べることもあるみたいだけど、タコなんかさっぱりなんだよね。
そんな欧米でのイカを使った料理といえばイカスミの料理が思い浮かぶよね。
イカスミパスタやリゾット、イカスミのスープなんかもあるのだ。
地中海沿岸、特にギリシアやイタリアでは欧州の中では魚介類が食べられるんだけど、イカもそれなりに食べるんだよね。
琉球(沖縄)にはイカスミを使った料理があったみたいだけど、日本にはあんまりイカスミを食べる習慣はなかったようで、イカスミ料理は洋食がメインだよね。
で、日本だとイカ以外にタコも食べるのに、タコスミ料理というのは出てこないのだ。
誰でも発想できそうだけどそれがないということには、イカスミとタコスミの違いに由来しているのだ。
イカスミもタコスミも黒い成分はメラニンで、人が日焼けしたときに皮膚が黒くなるのと同じ色素だよ。
でも、イカとタコではスミの使い方がそもそも違うので、スミの成分も異なっているのだ。
それでイカスミは料理に使うけど、タコスミは使わないわけ。
実際にイカやタコをさばくとわかるんだけど、スミ袋からして違うんだよね。
イカスミはとても粘性があって、海中に放出されてもあまり広がらずに紡錘形の形になってとどまるのだ。
実は、これは自分の分身を作ってそれをスケープゴートにして逃げるためのものなんだよ。
忍者の空蝉(うつせみ)の術と同じなのだ。
なので粘性を強くしてすぐに拡散しないようになっているのだ。
このイカスミにはうま味のもとでもあるアミノ酸が豊富に含まれているので、食べてもおいしいわけ。
もともと粘性もあるのでパスタなんかにもからめやすいし、食材として使いやすくもあるのだ。
一方のタコスミは粘性がなくさらさらしていて、海中に放出されるとぱっと拡散するのだ。
これはタコがスミを煙幕のように使って目くらましをしているからで、スミが広がって敵の視界が悪くなっている間に逃げるというわけなのだ。
忍者の煙玉と同じだよ。
海の生物の場合、刺客ではなくてむしろ嗅覚に頼っているような生物も多いので、このスミには生臭い臭いがついていて、それで敵の嗅覚も攪乱するのだ。
なので、タコスミはイカスミと違ってちょっとくさいのだ。
さらに、ただの煙幕ではなくて、エビやカニ、貝を麻痺させるようなペプチドも含まれているとか。
タコスミはさらさらしすぎているし、アミノ酸もあまり含まれていなくてうま味がないどころか臭いので、イカスミと同じようには使えないというわけなのだ。
ちなみに、ギリシアではイカやタコのスミから黒茶色の絵の具を作っていて、それがセピア色なのだ。
セピアというのはもともとギリシア語で甲イカのことなんだって。
セピア色というとちょっとあせた感じの淡い黒だけど、まさにイカやタコのスミだとそんな色になるのかも。
でも、なんかイカスミやタコスミをそのまま絵の具に使ったら生臭そうだよね(笑)
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