完熟ガス
ボクは毎朝バナナを食べているんだけど、真っ黄色に完熟した甘く、とろりとしたものよりも、まだちょっとかたさが残っていて、少し酸味があるような青いものが好きなのだ。
でも、バナナって放っておくと黄色くなって、さらに置いておくと茶色くなっちゃうよね。
これは別に腐っているわけじゃなくて、熟成が進んでいるのだ。
バナナは通常青いうちに収穫して低温の倉庫で保管しておくんだけど、それがお店屋さんに並んで常温にさらされると、徐々に熟れてくるという仕組みなのだ。
※日本では特に検疫上の理由から未成熟のバナナしか輸入できないので、必ず後で成熟させるのだ。
で、この時に活躍しているのがエチレンガス。
エチレンガスはH2C=CH2という化学式の単純な物質だけど、これが植物の世界ではホルモンとして使われているんだよね。
工業的には石油由来の炭化水素を高温で熱分解して作るんだけど、植物の中では硫黄を含むアミノ酸のメチオニンから作られるようなのだ。
植物の中では一般に成長促進ホルモンとして使われていて、花芽の形成なんかを促すそうだよ。
で、バナナなどの果実の成熟(色づきや軟化)も促すのだ。
この作用はエチレンが細胞壁を壊すセルラーゼという酵素に関与していて、細胞壁が壊されることで実がやわらかくなって、葉緑素も破壊されて緑色から別の色素の色(赤とか黄色)になるようなんだ。
バナナは自分でエチレンガスを出していて、これは低温にすると放出が抑制できるので、出荷する前は低温にした倉庫で保管するのだ。
むかしは真っ青なバナナを収穫して、それを船で運んでいる間に熟成させたみたいだけどね。
今では出荷前にエチレンガスをかけて、おいしく熟れたところを出荷するんだって。
これを追熟というのだ。
追熟させないで自然に熟成したものはあんまりおいしくないんだそうだよ(>_<)
で、果物の中で多くのエチレンガスを放出するので有名なのがリンゴ。
リンゴの近くにバナナを置いておくとすぐに黄色く熟れてやわらかくなってしまうのだ。
でも、じゃがいもなんかに対しては目が出るのを抑える働きもあるみたいだよ。
リンゴを置いておくときは、バナナからは離して、じゃがいもの近くに置くべきなんだね。
で、バナナを長期間保存したいときは、実はエチレンが重合したポリエチレンの袋に入れておくとよいらしいのだ。
バナナは房ごと保管すると自ら出すエチレンでどんどん熟れていってしまうので、一本ずつ分けてポリエチレンの袋に入れ、空気を抜いておくのがよいらしいよ。
でも、房ごと入れてしまうと、かえってエチレンガスが大量にこもってしまうので早く成熟してしまうのだ。
ま、青いバナナを早く食べ頃にしたいときはそれを使うとよいのかもしれないけどね。
ちなみに、ポリエチレンの袋に入れることとエチレンガスの関係はあまりないみたいで、ポリエチレンの袋からエチレンガスが出ていたり、逆にエチレンガスを吸収するというわけではないみたい。
ただ単に房で隣り合っているバナナから出ているエチレンガスを遮蔽しているだけのようなのだ。
単分子だと成熟させる作用があるのに、やっぱり重合して合成樹脂になってしまうとそういう作用はなくなるんだね。
逆にポリエチレンからエチレンが出ているようだとどんどんポリエチレンが壊れていくということだから、そういうものだったら今のようには使われていないよね。
よい意味でも悪い意味でも分解しづらく丈夫なのがポリエチレンの特徴だからね。
0 件のコメント:
コメントを投稿