2008/01/31

寒い時期には恋しい

寒い時期に恋しくなるのがあたたかい食べ物。
米国にいる身としてはおでんなんかが恋しいのだ。
コンビニでも売っているので、日本にいるときもよく寒い夜にちょっと買って食べたりしてたんだよね。
年末に日本人関係者で集まった忘年会パーティではおでんを作ってきてくれた人がいて、ひさびさでおいしかったのだ。

おでんは極めて珍しい煮物で、普通は煮物は自分の家で作るか、お総菜屋さんで買うかくらいしか選択肢がないんだけど、ファースト・フード的にコンビニや駄菓子屋なんかでも売っているんだよね。
それだけに日本人には身近な食べ物となっているのだ。
おでんの「でん」は田楽の「でん」で、田楽には串に刺した焼き田楽と(今でもこんにゃくや豆腐で作るよね。)、煮込み田楽があって、その煮込み田楽が発展したもののようなのだ。
女房言葉で田楽の「でん」に「お」がつけられ、「おでん」となったみたい。

田楽はみそをつけて焼いたり、みそで煮込むものだけど、江戸時代になって濃口しょうゆが発明されると、江戸近辺ではしょうゆ味で煮込んだおでんが作られるようになり、それが関西に伝わったそうなのだ。
それで関西ではおでんのことを「関東炊き」なんて言うんだよね(中国の煮込み料理に由来する「広東炊き」から発展したという節もあるらしいのだ。)。
で、関西では昆布の出しをきかせて濃口しょうゆではなくて薄口しょうゆを使うようになって、より透明感のある汁になったのだ。
でも、なぜか関東ではその後廃れてしまって、濃口しょうゆの濃い色のおでんはいったん姿を消してしまったそうだよ。
それが関東大震災の後、関西から来た救援の人たちが関東炊きを振る舞って、東京でもおでんが復活したんだって。
なので、今では関東でも汁の色は薄めなのだ。
濃い色のおでんは一部で残っていたり、当時の味が再現されたりしているらしいけど、ボクは薄い色の出しのきいたスープが好きなのだ。

おでんは軍隊のメニューに取り入れられたこともあてその後全国展開をとげるのだ(これはカレーや肉じゃがが広まったのと同じだね。)。
で、各地でいろんなアレンジが加えられるようになり、具も共通で入っているようなものだけでなく、地域色のあるものが使われるようになったのだ。
やっぱり関東ではしょうゆをきかせるので少し汁の色が濃いし、愛知では八丁みそが入っていたりするのだ。
関東近辺のおでんのみで見られる具は小麦粉を塩と水で練ってから蒸して作る「ちくわぶ」。
それ自体は味が全くないものだけど、汁を吸わせてやわらかくなったところを食べるのだ。
ボクなんかも好きだけど、他の地域の人にはあんまり知られていないんだよね。
それと、むかしはなるとも入れていたらしいのだ(静岡の焼津では今でも標準で入っているらしいけど。)。
おそ松くんに出てくるチビ太のおでんの一番下の部分はもともとはなるとらしいよ。

一方、関西では牛すじなんかが入っていて、より濃厚なスープになっていたりするのだ。
静岡では名物の黒はんぺんを入れたりするけど、おでんに「だし粉」と言われるイワシの削り節をかけたりするんだよね。
愛知では味噌味なので同じ具でもまた味がかなり違うのだ。
沖縄では豚足なんかも入れるらしいよ。
でも、こうなるともう何が標準のおでんかはわからなくなっていて、こんにゃくや大根、玉子などの具をだしをきかせたスープで煮込んだ料理としか言いようがないのだ。
それでも、これは「おでん」だとなんとなく認識できるから不思議だよね。
きっと海外の人には同じ料理とは思われないだろうけど。

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