2008/01/26

速効だよ

注射薬の場合は薬剤を直接静脈の中に投入するので効きが早いんだけど、それに匹敵するくらい早いのが座薬(坐剤)なのだ。
よく子どもが高熱を出すと解熱剤の座薬が処方されるけど、これは即効性があって、しかも、吐き気などの症状があっても大丈夫だからなのだ。
さすがに大人になると痔の薬以外ではおしりに使う薬はほとんど使わないけど(笑)、それでも口から飲む経口薬より効きがよかったりするので使われることもあるのだ。

経口薬の場合は、(食後に飲む薬の場合は)食べ物などと一緒に胃に入って、そこから小腸まで吸収されるのだ。
そもそも胃から小腸に行くまでにそれなりに時間がかかるので、即効性はないんだよね。
しかも、小腸で吸収された栄養や薬はいったん門脈という特殊な静脈によって肝臓に行くのだ。
肝臓では薬や毒の代謝を行っていて、せっかくの有効成分も肝臓で一部代謝されてしまって有効成分が少なくなるのだ(これを肝初回通過効果と言うんだよ。)。
酸に弱い物質だと胃酸でだめになってしまわないように工夫しないといけないし、経口薬は作るのがけっこう大変なんだよね。
でも、一番使いやすい形態なので、多くの薬はなんとか経口薬に使用とするのだ。

一方、坐剤の場合は直接肛門から直腸に入れるわけだけど、大腸では吸収された栄養や薬は直接静脈に載って全身をめぐるのだ。
肝臓も通らないので、初回通過効果もないんだよね。
大腸で坐剤が溶け始めて薬の成分が吸収されるまでのタイムラグはあるけど、注射薬には勝てないまでも経口薬よりは格段に早く効くのだ。
経口薬でも徐々に薬の成分が溶け出していく徐放剤というのがあるけど、坐剤だと溶けていく速度をコントロールするだけなので経口薬より簡単に徐放剤が作れるのだ。
強い吐き気があってものが飲み込めない状態だったり、味や臭いが悪すぎてとうてい口に入れられないようなものでも坐剤だったら使えたりというメリットもあるんだよ。
使うのには抵抗があるけどね(笑)

同じように早く聞くのが狭心症の患者さんが頓服(症状が出たときに薬を服用することだよ。)に使うニトログリセリンなんかの舌下錠という形態。
これは文字どおり舌の下に入れて徐々に溶かしていくんだけど、口の中の粘膜から薬の成分が吸収され、そこから静脈に入って全身を回るのだ。
上と下で違うけど、坐剤と同じ仕組みだよ。
でも、口の中で溶けて口腔粘膜から吸収されないといけないので使える薬は限られるんだよね。
同じように口の中で溶かす薬でトローチがあるけど、これは口の中やのどの粘膜に作用させるための薬の形態で、外用薬(ぬり薬)の一種という整理なのだ。
のどスプレーなんかも同じように外用薬なんだよ。
口の粘膜じゃなくて鼻の粘膜に作用させる点鼻剤というのもあるんだよね。
最近は花粉症の薬でよく使われているのだ。

でもでも、ぜんそくの薬の噴霧剤は外用薬ではなくて舌下錠に近くて、口やのどの粘膜から薬の成分を吸収させるものなのだ。
ぜんそくの症状が出て苦しいとついつい何度も噴霧してしまうんだけど、そうすると薬の量が多すぎて副作用が出ることがあるんだよね。
なので、なかなか使い方が難しい薬の形態と言われているのだ。

それにしても、一言で薬と言っても様々な形態があるんだよね。
この他にも軟膏や膏肓などの外用薬、目薬なんかもあるし、本当にバラエティに富んでいるのだ。
それぞれの薬の形態にはそれなりに使い方に理由があるので、きちんと使用上の説明をよく読んで、正しく使わないとね。

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