凍結乾燥
DCの夏は東京より暑いと思っていたんだけど、冬も東京より厳しいのだ。
毎朝氷点下の気温で、水たまりなんかは凍っているんだよね。
でも、基本的に湿度が低いこともあって、霜柱なんかはあんまり見かけないのだ。
そんな気候で思い出したのが高野豆腐。
あれってかために作った豆腐を寒ざらしにして作るんだよね。
夜に氷点下まで冷え込んで中の水分が氷となってかたまり、昼間それが温められて水になってとけ、ぽたぽたと垂れるのだ。
こうして寒ざらしにしておくと、豆腐の中の水分が抜けていって、独特のスポンジ状の高野豆腐になるのだ。
豆腐の中では微少な氷の粒ができて、それがまた融けて垂れていくので、無数の小さな穴が開くのだ。
そのおかげでどくときのふわふわした食感と味のしみやすさが出るんだよ。
調理するのは難しいと言われるけど、味がよくしみておいしいよね。
これはもともと豆腐の保存性を高めるために始まったんだよ。
似たようなものに凍みもちなんてのもあって、おもちは日持ちさせるために水につけて水もちにすることもあるけど、その後さらに寒ざらしにして水分を抜く場合もあるのだ。
水もちは焼くとべちゃべちゃになってしまうことがあるけど、凍みもちはまた普通のもちとは違った食感が楽しめて、水でもどして食べたり、汁物の具にしたり、油で揚げておかきにしたりもできるんだよ。
大根はそのまま細く切って干すと切り干し大根だけど、輪切りにして寒ざらしで干すと凍み大根になるのだ。
これも切り干し大根とはまた違った食感が楽しめるんだよね。
いずれにしても保存性を高めるための乾燥法なのだ。
これはいわば凍結乾燥で、水分を凍結させて乾燥させる方法なのだ。
明治時代にはSF作家の星新一さんの父親で、星製薬の創業者にして星薬科大学を創立した星一さんが冷凍法という濃縮法を開発しているのだ。
これは熱に弱い成分を含む水溶液を濃縮するときに、熱で水を飛ばすんじゃなくて逆に冷却してかたまった氷を除くことで濃縮するという方法なんだ。
まさに高野豆腐と同じ考えで、水溶液の中で氷ができるときは水だけが凍る(多少溶けているものも巻き込むけど)原理を利用しているのだ。
食塩水を凍らせていっても、できる氷はしょっぱくならないんだよ。
で、さらに技術が発展してできたのがフリーズドライ。
まずマイナス30度に急速冷凍して凍らせ、それをさらに減圧して真空に近い状態にするのだ。
すると、急速冷凍されて食品中にできていた氷が一気に昇華して水蒸気として抜けていって、乾燥されるのだ。
カップラーメンの具やレトルト食品によく使われているよね。
技術的にはかなり進歩しているけど、やっていることは高野豆腐と同じというのはなかなか感慨深いものがあるよ。
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