2008/01/30

政府の基本方針

昨晩、両院合同会議の場でブッシュ大統領による最後の一般教書演説(State of the Union Address)が行われたのだ。
これは大統領(行政府)から議会への予算要求である予算教書(米国は予算案の作成権は議会しか持っていないので、あくまでも行政府はこうしたい、というものに過ぎないのだ。政府が予算案を作れる日本とは仕組みが少し違うんだよね。)と、大統領が議会に経済報告を行う経済教書と並んで三大教書と呼ばれるものなんだよね。
その中でも、政府の抱える主要な政策課題とその対処方針を述べる一般教書演説は特に注目が集まるものなのだ。
今年の場合、ブッシュ政権では最後となる一般教書演説だったんだけど、大統領選の候補選びの方が盛り上がっていて、あんまり注目されていないんだけどね・・・。

合衆国憲法の規定では、米国の大統領は議会への出席権を持たないんだけど、その代わりに文書(message)の形で議会に意見を表明することができることになっているんだって。
それに基づいて上下両院の特別な招待のもとに大統領が招かれて、口頭で演説するのが慣習化したのが一般教書演説のようなのだ。
なので、別に必ず演説しなきゃ行けないというものではないみたい。
一般的には1月の最後の火曜日に行われることが多いそうだよ。

なんと、初代大統領のジョージ・ワシントンさんの時代からの慣習だということなのだ。
でも、1801年から1913年までは憲法の規定どおりに文書で意見表明するだけになっていたんだって。
それを第28代のウッドロウ・ウィルソン大統領が復活させ、第30代のカルビン・クーリッジ大統領からはラジオ放送が、第33代ハリー・トルーマン大統領からはテレビ放送が行われるようになったんだって。
こうして一般の人の目にも触れやすくなったからより注目されるようになったんだよね。

で、この一般教書演説は上下両院の議員の前で行われるんだけど、副大統領もその他の政府の要人もみんな出席するのだ。
でも、そうするともしその場をテロか何かで攻撃されたときに大統領継承権を持つ人がみんな死んでしまう可能性があるので、継承順位第3位の上院仮議長(上院の名目上の議長は副大統領で、実質的に議長職を務めるのが仮議長なのだ。)は安全な場所に待機していることになっているんだよ。
大統領継承権のある政府高官(○○省長官)も同じように待機組で、最近では両院の各党の議員が一人ずつ「指定生存者」として欠席し、やっぱり待機しているんだとか。
日本の場合は国会に全員が集まっているときに国会議事堂がテロにあったらどうするのかな?

大統領による一般教書演説はプレスリリースでもわかるとおり、大統領の政策に賛成する場合は拍手が起こるのだ(それが「applause」の部分だよ。)。
でも、反対するときは拍手を控えるだけで、日本の国会のようにヤジを飛ばしたりはしないみたい。
入場の時も拍手で迎えるなどかなり友好的な雰囲気なんだって。
なんだかそういうところって日本の国会も見習うべきだよね。
日本では国会の開会の時は天皇陛下が臨席するからという理由で社民党や共産党は出席するのを拒否しているし、基本的には野党は欠席する慣習だけど、それとは大違いだね(笑)

これとにたようなものが、日本の内閣総理大臣による施政方針演説。
通常国会の開会の時に両院でそれぞれ行われ、後日、各会派の代表者1名ずつから代表質問がなされるのだ。
この施政方針演説の後には外務大臣による外交演説、財務大臣による財務演説、経済財政政策担当大臣による経済演説が続いて四大演説なんて呼ばれるんだよね。
代表質問はこの4つの演説で述べられた政府の1年の基本的な政策の方針に対してなされるんだよ。

日本の場合は憲法や国会法に明確な規定はなくて、本当に慣習としてのみやっているみたい。
でも、明治23年(1890年)に開かれた第1回帝国議会で山縣有朋首相が行って以来の慣習らしいので、本当に最初期から行われているものなのだ。
トラブルがあったり例外もあるらしいけど、これまでずっとやってきていて、ここが与党と野党の政策を戦わせる一番重要な場ともなっているんだよね。
ヤジを飛ばしたり怒鳴ったりと米国に比べてかなり野蛮なところもあるんだけど。

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