2007/08/18

古い細菌?

ぼーっとしているときに、思いもよらないことを思い出したりすることってあるよね?
ボクは今日、大学時代に習った「古細菌」という言葉を思い出したのだ。
とは言え、思い出したのは「音」だけで、中身はともなっていなかったので(笑)、調べてみることにしたんだ。

古細菌というは細菌と言うくらいで微生物の一種で、ボクが習ったころは「Archaebacteria(単数形はArchaebacterium)」と呼ばれていたのだ。
バクテリアの前の「archae」は「古代」を表す接頭辞で、考古学=archaeologyなんて言葉もあるよね。
今はバクテリア(真正細菌:Bacteria)とは性質が違うので、まぎらわしくないように「Archaea(アーカイア)」と言われるようになったみたい。

この生物は、海底火山の近くで噴出している熱水の中やとても濃い塩濃度の海水の中で発見されて、1977年にバクテリアとは別のものとして分けるべきと提唱されたのだ。
で、住んでいる環境が太古の地球環境に近い極限的な環境だったころから、きっと古くからいたものに違いない、とバクテリアより古くからいる、という意味を込めて古細菌とか始原菌とか名付けたんだよね。
でも、その後、けっこう広範に生息していることがわかり、しかも、バクテリアよりも真核生物(Eukaryote)に近いことがわかって、いわゆるバクテリアより世代の古い生物ではないことまでわかったんだよね(笑)
なので、今では後生細菌なんて呼ぶこともあるみたい。

生物は大ぐくりで分けると3つに分かれるというのが今の考え方で、それが細菌(バクテリア)、古細菌、真核生物の3つなのだ。
これらはドメインと呼ばれるもので、生物の基本単位の細胞の構造の違いに着目しているんだよ。
真核生物ドメインの下には、原生生物界(藍藻など)、菌界(いわゆるカビ)、動物界、植物界などの界(Kingdom)があって、さらにその下に脊椎動物門などの門(Division)、ほ乳綱などの綱(Class)、霊長目などの目(Order)、ヒト科などの科(Family)と下位分類に分かれていくんだ。
上野の国立科学博物館なんかに行くとこの生物の分類法がわりとわかりやすく説明してあるんだよね。

で、古細菌とか言うとなじみがないようだけど、実はかなり役に立っているのだ。
主な例はDNA検査の試薬。
DNA検査では人工的に特定のDNA状の塩基配列を増幅させるPCR(Polymerase Chain Reaction)という方法を使うんだけど、この時に使うDNAの複製酵素は好熱菌という古細菌由来のものなのだ。
普通のバクテリア由来のものだと50度くらいですぐに失活(酵素としての活性がなくなること)してしまうんだけど、好熱菌の酵素は90度以上になっても活性が維持されるんだ。
で、このPCR法ではDNAの二重鎖をくっつけたりはなしたりしながら反応させていくんだけど、そのときに60度から95度くらいの間の温度変化を繰り返すんだよね。
最初の最初は温度変化させるたびに酵素を足したと言うけど、この好熱菌の酵素の発見のおかげで、そんなことせずに楽に反応させられるようになったわけ。
そのおかげでかなりDNA検査もやりやすくなったんだよ。

まだまだわかっていないことが多いし、深海底などの人間にとって未知のフロンティアでも新たな種が見つかったりしているので、まだ全体像はつかめていないみたい。
でも、研究はどんどん進んでいて、これからいろんな分野でその研究の成果が応用されていくかもしれないんだよね。
そういう意味で専門家の間では注目を集めている生物なのだ。

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