無花果
スーパーに買い物に行ったら、果物のコーナーにイチジクが並んでいたのだ。
もうそんな季節なんだねぇ。
日本ではそんなに食べるものでもないけど、欧米の人はけっこう好きみたいで、生食するだけでなく、乾燥イチジクをお菓子に入れたり、イチジクのジャムなんかも好きなようなのだ。
このイチジクは漢字で書くと「無花果」なんだけど、これは花が咲いたようには見えないのに実ができているからなのだ。
でも、花が咲いていないわけではなくて、実は、実のように見える外皮(本当は花序)の中に小さな花が無数に咲いているんだよね。
内側に向かって咲いていて外気に触れないので見えないだけなのだ。
その小さな花のひとつひとつがイチジクの実のつぶつぶ(=果実)になるんだよ。
イチジクの他にもイヌビワやガジュマルなんかがこんな花の咲かせ方をするみたい。
でも、花が「実」の中に咲いているとすると、どうやって受粉するかが問題になるよね。
例外はあるけど、イチジクは自家受粉しないので、別の花から花粉をもらう必要があるんだ。
とは言え、花が外から見えないから、普通の方法では花粉のやりとりができないよね。
で、実際には実に巧みな仕組みができあがっているのだ。
イチジクの「実」には下側に小さな穴が開いていてそこをイチジクコバチというとても小さなハチが通るようになっているんだ。
このハチが花粉を運んでくるわけ。
このハチはイチジクの花に卵を産むんだけど、オスはずっとイチジクの「実」の中で生活していて外に出ないのだ。
イチジクの「実」の中で別の花の中にいるメスと交尾すると、オスは「実」の下側にある穴を拡げて、そこからメスを外に出してあげるんだよね。
メスが外に出るとき、このメスの体には花粉がついている状態になるのだ。
交尾したメスは今度は別のイチジクの「実」に穴から入るんだけど、今度はオスが穴を拡げてくれるわけではないので、入ると当時に羽がもげてしまうのだ。
で、もう外には出られなくなるわけ。
このメスは卵を産むとやっぱりイチジクの「実」の中で死んでしまうんだよ。
さらに、イチジクには雄花と雌花があるようで、ひとつの「実」の中にはどちらかしかないみたい。
で、コバチは雄花のある花にしか産卵できないようなのだ。
でもでも、雄花の「実」か雌花の「実」かは外からは区別がつかないので、半々の割合になるんだ。
運悪く雌花の「実」に入ってしまうと、花粉は届けられるのでイチジクは受粉して種子と果実が作れるんだけど、コバチは卵を産めないのだ。
運良く雄花に入れれば、そこで卵を産んで、その卵から次の世代のコバチが生まれてくるというわけ。
というわけで、イチジクとイチジクコバチはそれぞれが子孫を残すためにお互いを必要としているんだけど、絶妙なバランスでお互いに害し過ぎないようになっているようなのだ。
よく共進化の例として紹介されるんだけど、ちょっとずつお互いに形質を変化させていって、結果としてこのメカニズムができあがっているんだよね。
これが偶然に積み重ねの進化の過程でできたと思うとすごいよ!
ちなみに、日本の栽培品種のイチジクは受粉しなくても実がなる特別なもので、イチジクコバチがいなくても実ができるのだ。
なので、日本でイチジクを買ってよくよく調べてもコバチは出てこないみたい。
このイチジクはタネで増やせないので、接ぎ木で増やしているみたい。
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