2007/09/30

なしの東西

すっかり気候は秋めいてきたけど、食べ物でもそれが実感できるようになってきたのだ。
というのも、スーパーなんかでなしを見かけるようになったんだよね。
米国では洋なししかないのかと思ったら、以外に和なしも売っているのだ。
日本のものよりもだいぶ小ぶりだけどね。

なしはもともと東アジア原産で、和なしはそれが日本で品種改良されたもの。
弥生時代から食べられていたみたいで、静岡の登呂遺跡でもなしを食べた跡が見つかっているとか。
日本書紀にも名前が出てくるというからむかしからメジャーな果物だったのだ。
でも、品種改良が進んだのは江戸時代で、さらに、明治から戦後にかけて今食べているようななしが作られたそうだよ。
戦前には松戸のゴミ捨て場で二十世紀なしが発見され、川崎では長十郎が発見されたのだ。
川崎大師には長十郎の碑があるよ。
戦後になると、農林水産省の農業技術研究所(現・農業・食品産業技術総合研究機構)で幸水(なし農林3号)と豊水(なし農林8号)が開発されたんだって。
そう言うわけで、むかしあら食べてはいるけど、むかしながらのなしを食べているわけじゃないのだ。

一方、洋なしは中国から欧州に伝わって独自の発展を遂げたもので、そもそも形がいびつな縦長になっているよね。
食感もだいぶ違って、甘みと方向が強くて、実はしっとりとなめらかなのだ。
古代ギリシアでもすでに栽培していたと言うから、欧州でのなしの歴史も古いのだ!
洋なしは収穫後すぐはあまりおいしくなくて、追熟と言って収穫後に熟成させなくちゃいけないんだって。
追熟の間に実の中のデンプンがブドウ糖や果糖に分解されて甘みが増し、ペクチンがゲル化することで独特のねっとりしたなめらかさが出るそうだよ。
芳醇な香りも追熟させてはじめて出てくるんだって。

なしというとしゃりしゃりした食感を思い出すけど、これは実の中にある石細胞という特殊な細胞によるものなのだ。
細胞壁が分厚くなった細胞で、これがあるからなしはジュースには向かないんだよね。
大根おろしのようになってしまうのだ・・・。
で、洋なしにもこの石細胞はあるんだけど、量が少ないのであまりしゃりしゃり感は感じないみたい。
中には多少しゃりしゃりしたのもあるけどね。

なしはみずみずしくて甘い印象があるけど、糖度はリンゴと同じくらいなんだって。
酸味が少ない分甘く感じるのかな?
二十世紀のような青いなしは比較的酸味が強いけど、同時に甘みも弱いのだ。
リンゴとの大きな違いはビタミンがほとんど含まれていないということで、くだものとしては珍しい部類の「甘いだけ」という存在みたい。
でも、タンパク質分解酵素を含んでいるので、肉を軟らかくするのにすりおろしたなしをいれたりすることもあるのだ。
韓国風の焼き肉のつけだれにはなしのおろしたのが入っているんだよね。

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