2007/10/13

北の氷

今年のノーベル平和賞は、地球温暖化問題への貢献でアル・ゴア元米国副大統領と、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)が受賞したのだ。
それだけこの問題が注目されているということだよね。
ゴアさんはクリントン政権で副大統領をしているころから気候変動問題に取り組んでいて、大統領選で今のブッシュ大統領と競って負けてからは、民間企業の非常勤の役員などをしながら、引き続き気候変動問題に取り組んでいたんだよね。
ドキュメンタリー映画として作られた「不都合な真実」は日本でも話題になったのだ。

でも、一部でこの地球変動問題に関する話は誇張されていたり、事実が誤解されていると言われるんだよね。
そんなひとつが、「北極の氷が溶けると海面が上昇する」というもの。
これは専門家からそんなことはあり得ない、と反論されているんだけど、いまいち直感的にわかりづらいので、自分でも考えてみることにしたのだ。

北極は南極と違って海の上に氷が浮いているだけで、陸地はないんだよね。
なので、氷が溶けてしまえば海しか残らないのだ。
そんな北極でも、長らく氷は溶けずに残っているので、その上ではホッキョクグマやアザラシ、セイウチなんかが暮らしているんだよね。
で、現在は北極の氷が溶け始めていて、これらの動物が住みにくくなってきているというのは事実なのだ。

肝心の氷が溶けたら海面が上昇するかどうかだけど、それを考えるには、水は凍ると体積が増える、という特徴を思い出さないといけないのだ。
約11分の1体積が増えると言われているんだけど、中学校でも習う浮力の法則では、押しのけた水の分だけ浮力が得られるということなので、ちょうど凍って体積が増えた分だけが水の上に浮かんでいる状態になっているんだよね。
氷山の一角とはまさにこの状態を示していて、海に浮かんでいる氷は海面に出ているのはごくごく一部で、その下に大きな氷があることを示しているのだ。

そんな状態で氷が溶けたときにどうなるかだけど、海の表面に出ているのはあくまでも体積が増えた分に過ぎないので、いくら氷が溶けても水になると体積が減って、表面に出ていた分がなくなるので、押しのけていた水の分だけしか海の水は増えないのだ。
つまり、海の上に浮かんでいる氷の量が減っても、その体積分の水が増えるわけではないから海面は上昇しないのだ!

単純化のために四角いようかんのような氷を考えるとわかりやすいんだけど、550mの水がかたまって氷になると、550m3の氷が海面の下にあって、海の上には50mだけ氷が浮かんでいるのだ。
このうち、海の上で10mの氷が溶けたとすると、海面の下では110mの氷が溶けていることになるんだよね。
合わせて120mの氷が溶けていることになるけど、これが水になると体積が減って110mの水になるのだ。
すると、もともと海面の下にあった氷の体積と同じで、氷のあったところが水に置き換わるだけで、海の水の量は変化しないというわけ。

というわけで、北極の氷が溶けることがよいこととは言わないけど、それによって海面が上昇するというのは明らかに誤解なのだ。
むしろ、氷河や万年雪として地上に保存されている氷が溶けると、これは溶けた分がまるまる水になって海に流れ込むので海の水が増えるのだ。
北欧やシベリアに残っている氷河は溶け始めているらしいけど、この氷は海面の上昇につながるんだよね。
なので、海面の上昇ということではそっちの氷を気にすべきなのだ。
個人的にはホッキョクグマやアザラシの住むところが減ってしまうので、北極の氷もとても大事だと思うけどね。

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