2007/10/01

なまり

米国では、中国製のおもちゃに鉛が大量に入った塗料が使われていることが問題になっていて、バービー人形を製造している最大手のおもちゃ会社のマテル社が大規模な回収を行っているのだ。
鉛は必須元素で、骨や脊髄の構成には重要と言われているんだけど、一方で多量に摂取すると中毒症状が出ることでもよく知られているのだ。
おもちゃなんかは子どもが手でよく触るものだから、鉛中毒のリスクが高まって危険ということだよ。

鉛はやわらかくて、比較的低温で融けるのでむかしからよく使われてきた金属なのだ。
しかも、すぐにさびるけど、さびた部分が皮膜になって内部に浸透しないので(アルミニウムと同じ)、鉄なんかより扱いやすいんだよね。
で、古代ローマでは鉛製のコップを使っていたり、水道管を鉛で作ったりしていたのでなまり中毒が多かったみたい。
重金属で重いということもあって、おもりに使ったり、銃の弾に使われたりもしていたんだよね。
さらに、ガンマ線を遮蔽するので、放射線の遮蔽剤としてもよく使われるのだ。
欧州では、酢酸鉛を甘味料として使っていた時代もあって、ベートーベンさんはその甘味料の入ったワインが好きだったから鉛中毒になっていた、なんて話もあるんだよ。
最近は少なくなったけど、ハンダや缶なんかにも鉛はよく使われていたので中毒の危険性が高かったのだ。
ちなみに、鉛の塩はきれいな色が出るのでむかしはよく顔料や塗料に使われていて、四酸化三鉛の赤やクロム酸鉛の黄色が有名だよ。

鉛中毒になると、急性症状では嘔吐、腹痛、ショック(末梢循環不全といって手足の先などの末梢組織の血流量が極端に減ることで、顔面が蒼白になったり、急激な体温低下が起こる症状なのだ。)が起こることが知られていて、慢性中毒では消化器症状、神経症状、貧血なんかが見られるそうだよ。
ふだんは尿中に排出されていくんだけど、排出量より摂取量が多くなるとこういう中毒症状が出てくるなって。
鉛はヘモグロビンの合成過程で鉄と競合することが知られていて、それでヘモグロビンができづらくなって貧血などの症状が起こるみたい。
他にも、鉛の量が多くなってくると今度は亜鉛の排出が促進されてしまうみたいで、鉛の多量摂取で亜鉛欠乏の症状が出るようなのだ。
それが消化器症状や神経症状の原因だろうね。

なんと、現在の日本でもまだ鉛製の水道管が残っていたりするそうで、鉛中毒の危険性があるのだ。
さらに、鉛製の散弾銃の弾が放置され、それを鳥や小動物が摂取することで鳥や動物の鉛中毒も問題になっているんだって。
人間だけじゃなくて、いろんなところに影響が出ているんだねぇ。
便利なものだからこそ、正しく使って、こういう悪い面が出ないようにしたいものなのだ。

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